固定席を設けない仕組みを「フリーアドレス」と呼ぶ
米国のメディアは近年、企業の多くが広いワンフロアスペースで社員の座席を決めない傾向があると伝えました。日本においてもダーツで席を決めるなど、ユニークな方法を導入しているカルビーの好調な業績を報じるニュースもあります。
そこで、どうでしょう。あなたは職場の席が毎日変わるとしたら、迷惑に思うでしょうか。エアコンの風が直撃する席で困っている人や、隣の席の同僚がどうにも嫌で仕方がないという人には朗報かもしれません。逆に、職場のデスクに書類が山積みの人や、自分の引き出しの中がお菓子ボックスになっている人は少々困るでしょう。
そうした職場で従業員の固定席を設けない仕組みを「フリーアドレス」と呼びます。米国では既にメジャーになっていますが、日本でも導入する企業は増加傾向にあります。具体的には、どんなやり方で、そして、どんなメリットがあるのでしょうか。
出勤した社員は自分が仕事をするスペースを確保する必要がある
フリーアドレス制では固定席がないため、出勤した社員はその日、自分が仕事をするスペースを確保する必要があります。前述のカルビーの例のほか、空いている自分の好みの席に座る、コンピューターが自動的に席を割り当てる、くじ引き方式などが取り入れられているようです。
フリーアドレスの場合、会議やミーティングは共有のフリースペースやインターネット上で行われることが多いといいます。いずれにせよ、席が毎日変わるため、仕事用に持ち運びできるノートパソコンや無線LANが使える環境は必須となります。なお、社員の荷物は共有のキャビネットに保管するなどします。
多くの企業がそのメリットを実感している
フリーアドレスを導入するメリットとしては、次のようなことが挙げられます。
1.社内の風通しが良くなる
隣に座る人の仕事が自然と目や耳に入り、社内の誰がどんな仕事をしているのかが把握しやすくなります。大企業になればなるほど組織が縦割りになり、横のコミュニケーションが滞りがちです。しかし、フリーアドレスでは自分と異なる部門の人とも会話できるようになるため、部門を超えた相互理解が深まるなど、社内全体のコミュニケーションが活発になったという事例もあります。
2.社員の意識の変化
毎日席替えが行われるため、退社する前に自分のスペースを片付ける必要があります。そのため、効率よく働く工夫をする、無駄な紙を出さない(紙文書の削減、コピーの減少)など、社員自身の仕事のやり方に対する意識に変化が見られたというデータがあります。
3.新たな発想が生まれる土壌に
固定席よりも多くの人と接する機会が増えるため、特にクリエイティブな業種の場合、新たな発想が生まれる土壌となり得ます。
フリーアドレスを採用した企業では、その効果から社員の理解も進んでいるといいます。社内をフリーアドレスにするためには、導入に向けた社内環境の整備や社員教育など、しっかりとした事前の計画と準備が必要です。業種によっては向き不向きもあるでしょう。しかし、多くの企業がそのメリットを実感していることからも、検討してみる価値はありそうです。
(大竹 光明/社会保険労務士)