家計を改善するには、毎月支払う「日常固定費」の見直しが効果的
不動産市場が活況を呈し、首都圏ではタワーマンションが次々と建設されています。また、4月からの物価上昇が重なり、何かと支出が増えている世帯が多いのではないでしょうか。
このような中、家計を改善するには、旅行や外食等の楽しい「変動費」よりも、水道光熱費、通信費、車両関連費、保険料、住居費など、何気なく毎月支払う「日常固定費」の見直しが効果的です。中でも住宅ローンは、金額が大きいだけに繰上げ返済に取り組む人が多いようです。しかし、住宅ローンの金利はほぼ横ばい。本当に、繰上げ返済に熱心になる必要があるのか、疑問が浮かびます。
金利が低ければ、繰上げ返済の金利軽減効果はあまり期待できない
繰上げ返済とは、通常の返済とは別に、元本の一部または全部を前倒しで返済することで、金利の支払いを減らすという方法。毎回の返済額は変えずに期間を短くする「期間短縮型」と、返済期間は変えずに毎回の返済額を少なくする「返済額軽減型」の2つがあり、「期間短縮型」の方が「返済額軽減型」よりも金利軽減効果が大きくなります。また、早く実行するほど、恩恵を受けることができます。
住宅ローンの繰上げ返済の効果は、「借入残高が多く、残り期間が長く、借入金利が高い」ほど大きく、「借入残高が少なく、残り期間が短く、借入金利が低い」ほど小さくなります。つまり、借入残高が多く、残りの期間が長いのであれば、それなりに金利軽減効果を得られますが、最近、借りた、もしくは借り換えた場合は、金利が0%台、1%台であることが多く、もともとの金利が低いために、金利軽減効果はあまり期待できません。また、住宅ローン返済の後半で繰上げ返済をしても、残高も少ないため、金利軽減効果は大きくありません。
1つの例で確認してみましょう。
借入金額:2,500万円
金利:1.5%
返済期間:35年
繰上返済額:100万円
■繰上返済時点:返済開始後3年後
期間短縮型の金利軽減効果:約57.2万円
返済額軽減型の金利軽減効果:約26.0万円
■繰上返済時点:返済開始後5年後
期間短縮型の金利軽減効果:約54.3万円
返済額軽減型の金利軽減効果:約24.2万円
■繰上返済時点:返済開始後10年後
期間短縮型の金利軽減効果:約42.0万円
返済額軽減型の金利軽減効果:約20.0万円
■繰上返済時点:返済開始後20年後
期間短縮型の金利軽減効果:約23.7万円
返済額軽減型の金利軽減効果:約11.7万円
■繰上返済時点:返済開始後30年後
期間短縮型の金利軽減効果:約6.5万円
返済額軽減型の金利軽減効果:約3.9万円
物価が上昇するインフレ経済では、資産運用が効果的な場合も
上記の結果を見ると、万円単位、十万円単位で返済が減りますので、魅力的に見えますが、一方で、この繰上げ返済の原資をもとに資産運用に取り組み、同等の収益、または同等以上の収益を得ることができれば、とも考えられます。
住宅ローンの繰上げ返済の金利軽減効果は確実性がありますが、資産運用にはリスクが伴い、損失を被る可能性もありますので、一概には比べられません。しかし、外貨建てMMF(豪ドル、NZドルなど)、外貨建て債券、不動産投資信託など、リスクはあるものの、比較的安定した金利、分配などを見込むことができる金融商品を検討する価値はあるでしょう。
平成バブルがはじけた後、約20年続いたデフレ経済では、繰上げ返済は家計改善に大きな効果が得られる必殺技でしたが、物価が上昇するインフレ経済では繰上げ返済よりも資産運用が効果的な場合もあります。また、住宅ローンの金利が物価上昇率よりも低い場合、繰上げ返済をするよりも手元に資金を残して、低金利の住宅ローンによって得た余裕を活かして、ゆっくり返済する方が良いとも考えることもできます。消費税アップ後の家計を検証して、どのようなアクションを起こすか、家族会議を開いてみるのも良いでしょう。
(益山 真一/ファイナンシャルプランナー)