明らかに「持ち家」の勝ち
いつになっても決着がつかない「賃貸VS持ち家」にまつわる論争ですが、筆者としては答えが決まっています。明らかに「持ち家」の勝ちでしょう。個人としての経験からも、不動産の知識と理論から考えても、どちらも同じ結論になります。
しかし、賃貸と持ち家のギャップは、水と油のような、あるいは休戦している二つの国の国境線のような、互いに相容れないものではありません。実際、賃貸に住んでいても、別荘などの家は購入できます。逆に持ち家があっても、別宅として家を借りることができるのです。
そこで発想を変え、「賃貸に住みながら、持ち家のような生活を楽しむには」、または「持ち家に住みながら、賃貸のような生活を楽しむには」、どうしたらいいかを考えてみましょう。
持ち家でできて賃貸でできないのは改装
賃貸に住みながら持ち家のようにできないことを一つ挙げれば、「改装ができない」があります。賃貸で住むには必ず「原状回復義務」があり、借りるときの状態で返す必要があります。細かいところでは、釘一本の穴を開けただけで修理費用を請求されることもあります。また、浴室、シンク、トイレ、ふすま、水道の蛇口を見ればわかるように、内装も普及品しか使われていないことがほとんど。
そこで、心豊かな賃貸ライフを送るため、ホームセンターに直行です。水栓をワンハンドルに変えるのは朝飯前。毎日触るハンドルですから、片手で触れるたびに満足感があふれてきます。もちろん、出て行く時のために元あった水栓は保管しておきましょう。
ふすまには、貼ってからでも綺麗に剥がせる「マスキングテープ」の出番です。ふすまにマスキングテープを貼り、その上から強力なテープで固定すれば、小さな棚やニッチのようなものはすぐに作れます。また、ラフに塗った白いペンキの板を貼れば、安っぽいふすまがアンティーク調の扉に早変わりします。
壁はどうでしょう。安い木材を購入し、天井と床につっぱり棒のように木の下地を並べ、板を打ち付ければ、部屋の雰囲気全体がアンティークだろうが自然派の珪藻土だろうが自由自在に変更できます。ピンで穴を開けるのも、釘を打つのも可能になります。こうなれば「私だけの部屋」ができあがります。
持ち家であれば失業しても年をとっても住み続けることができる
しかし、そのような充実の時は長くは続きません。やがて、退去の日が訪れます。原状回復の日がやってくれば、今まで作り上げたものは結局「砂上の楼閣」だったことに気付くわけです。元の姿に戻って大家は喜ぶかもしれませんが、その過程で出たゴミは、「燃えるゴミ袋」にとても入りません。処分に困り、途方に暮れるかもしれません。
そこで言えるのは、結局「持ち家」だということ。持ち家であれば、建てた後も、購入した後も、自由自在に変更が可能です。持ち家であれば毎月の賃料のやり繰りもなくなり、失業しても年金生活になっても、年をとっても住み続けることができるのです。
(中山 聡/不動産鑑定士)