文部科学省が「夜間中学」の実態を発表
文部科学省は5月、義務教育の未修了者が通う「夜間中学」の実態を発表しました。公立の夜間中学は8都府県の25市区で31校あり、生徒数は1849人(うち約8割が外国籍)。一方、ボランティアらが運営する「自主夜間中学」(識字講座なども含む)は154市区町村に307カ所あり、生徒は7422人(うち外国人が6割)という状況です。文科省は「夜間中学の潜在的ニーズは高い」と見ており、公立夜間中学の各県1校設置を目指して今年度予算で設置へ向けた調査費を計上しています。
夜間中学とは、耳慣れない言葉ですが、正式には「中学校夜間学級」といいます。公立中学校の「夜間部」の位置付けで、もともと戦後の混乱期に生活困窮のため、昼間は家の手伝いなどで学べない生徒が通えるように設置されました。
通常の中学校と同様、市区町村が設置し、教員も配置され、教科書も無償配布されます。しかし、現在の夜間中学は現場が大きく変化しており、戦争や貧困で学校に通えなかった高齢者以外にも、不登校や病気で勉強が遅れた人、日本語を学びたい外国人らに、漢字や計算などの基礎的な勉強を教えています。そのほか、難民や無戸籍のために就学機会を得られなかった人など、潜在的な入学希望者はさらに多いと見られています。
「魅力的な国家の方針」になり得る
これらの状況を踏まえ、世界的に定評のある日本の義務教育と照らし合わせ、夜間中学の存在意義を考えていきます。1県1校の夜間中学拡充構想については、すべての国民に教育を受ける権利を保障する憲法26条の趣旨からして賛成するものですが、外国人生徒急増をどう考えるかが重要な論点になります。
外国人の義務教育に税金をあてることについて、国会できちんとした議論をして、その意義を明確にしなければなりません。ただ、日本の労働力人口が減る中で、介護士に代表されるように政府は外国人の人材を迎え入れる方向に舵を切っています。今後、日本の社会・経済にとって外国人の存在が大きな位置を占めることも考慮すると、日本の義務教育を世界の人たちに提供することは「魅力的な国家の方針」になり得る。
個々人の目的、能力、学力に応じたカリキュラムを組む必要が
また、デジタル教科書の導入、英語教育、道徳教育など義務教育の改革が進む中、夜間中学という戦後の混乱期に始まったイメージを払拭するため、ネーミング検討の余地はあります。
学習内容も外国人の受け入れを想定して個々人の目的、能力、学力に応じた適格なカリキュラムを組んでいくことが必要でしょう。そのためには、学習塾など民間教育機関と連携することで魅力的な運営が可能になると考えます。
(田中 正徳/次世代教育プランナー)