自宅不動産を担保にして老後の生活資金を借りる仕組み
リバースモーゲージとは、自宅不動産を担保にして老後の生活資金を借りる仕組みのことで、アメリカで広まり、日本においても老後資金対策の切り札として期待されています。自宅を担保に融資を受けたり、借入可能枠を設定する仕組みのため、自宅に担保価値がることが前提となっています。担保価値とは、簡単にいえば売却した際に何円で売れるかということで、担保価値のない住宅の場合、リバースモーゲージは利用できないということになります。
金融機関が自宅を担保にお金を貸すため、その際の貸し出し上限は自宅を売却した場合の価格です。借りた人は生きている間、お金を返す必要はありませんが、亡くなった後は自宅を処分(売却)して借り入れを返済します。金融機関によって貸し出し条件が異なり、エリアが限定されていることもあります。また、査定価格の範囲が決まっていて、その条件に当てはまらなければ融資の承認は得られません。
20年先の担保価値は確実に今より低くなっている
リバースモーゲージで重要なのは、前述の通り不動産価格の担保価値です。そこで、今後、日本における不動産市場の先行きを考えていきます。現在、日本では東京五輪開催に向けて不動産価格が上昇していると見られています。
しかし、それは都心の一部の投資用物件だけで、日本国内の土地をはじめとする不動産価格は徐々に下落しています。この傾向は今後も続くことが予想され、20年先の担保価値は確実に今より低くなっているでしょう。
不動産の担保価格よりも借入残高の方が多くなってしまう可能性も
不動産価格は、需要と供給で決定されます。つまり、需要が多ければ価格が上がり、需要が少なければ価格は下がります。今、不動産価格について注意する点は、空き家問題でしょう。土地を持っている人は通常固定資産税という税金を毎年払う必要がありますが、自宅用などの建物が建っていれば税金が少なくなるというのが現状の制度です。
しかし、今後は空き家の固定資産税について減免措置をなくす動きがあり、空き家を所有している人が税金負担を減らすため、物件を売りに出すことが考えられます。空き家が大量に売りに出されれば、不動産市場に物件があふれることになります。
一方、家を買う層は若い人に多く、少子化の流れを受けて住宅購入者数自体が減少すれば、需要が少ないにもかかわらず供給が増えるため、不動産価格が下落する可能性もあります。その場合、リバースモーゲージを申し込んだときの不動産価格より、将来の不動産価格が下がることが考えられます。さらに、著しく不動産価格が下落した場合には、不動産の担保価格よりも借入残高の方が多くなってしまう可能性すらあります。
(高橋 成壽/ファイナンシャルプランナー)