カード情報を盗み取り、悪用する犯罪が頻発
近年、クレジットカードやキャッシュカードなどの情報を盗み取り、悪用する犯罪が頻発しています。警視庁の発表によると、先日も客から預かったカードをスマートフォンで撮影し、電子マネーやネットショッピングの決済に利用したとして、元コンビニ店員の男が逮捕されました。
また、今年2月にはセブン銀行がスキミング被害を発表し、注意を促しています。日本クレジット協会によれば、こうした「盗み取り」による被害は年間60億円にも上るそうです。「盗み取り」の手口は巧妙に進化し、対策は利用者に委ねられているのが現状です。
カード犯罪を未然に防ぐ方法は皆無といっても過言ではない
カード情報の「盗み取り」は、メールや偽ホームページを利用して騙すもの、カードから直接盗むスキミング、特殊機器や知識を必要としないカメラ撮影、読み上げ録音などが挙げられます。
メールではウイルスやフィッシングと呼ばれる手口があり、銀行やクレジット会社のホームページから直接、偽の暗証番号入力画面へ誘導する手口も報告されています。スキミングはカードの特性を生かし、褐色の帯がある磁気型カードはATMなどのカード挿入口への読み取り機設置、レジでの決済時に読み取り機を利用するなどの手口が取られています。
かざすだけの非接触型カード(交通機関などで利用)は、読み取り機を近づけるだけで情報の「盗み取り」が可能です。特に非接触型のカードでは、信号や踏切など立ち止った際、カバンの中のカードからチャージ式の電子マネーが盗まれる被害が報告されています。そして、カメラ撮影や読み上げ録音はカード偽造を必要とせず、電子マネーの普及やネットショッピング、訪問業者などによるカード利用を促す暗証番号不要の決済方法を逆手に取っています。
このように、カード情報の「盗み取り」には多くの手口があり、その手口ごとに対策を行うことは専門家でも困難です。幾多の思考を重ねた結果、たどり着く防犯対策は「カードを作らない」ことになり、カード犯罪を未然に防ぐ方法は皆無といっても過言ではないでしょう。
危機意識の向上が被害防止に繋がる
しかし、カードがなければ買い物のたびに多額の現金を持ち歩くことになります。この不安を解消するために考案されたものがカードであり、「カードを作らない」との防犯対策は論外ではないでしょうか。そこで、カードの利便性にもう一度着目してください。
現金に代わるカードには、犯罪を未然に防ぐ(盗難に係る傷害、殺人など被害拡大を防ぐ)役割のほか、犯罪被害を補う役割があることに気付きます。カードの盗難や情報の盗み取りにより悪用された場合、その被害を補てんする保険が付随しています。銀行やクレジット会社など、カードを発行する会社によって契約内容は違いますが、ほとんどの場合、犯罪被害を前提にした仕組みが備わっています。
つまり、カードを利用するにあたり、犯罪を未然に防ぐ「防犯」という考え方ではなく、被害を前提とした「危機管理」という考え方を持つ必要があります。銀行やクレジット会社が対策として挙げる「預金残高や利用明細のこまめなチェック」は早期発見を意味し、被害を前提として最小限に止めるものです。犯罪被害は、未然に防ぐと同時に被害を前提とした対策も必要です。そのため、善意の利用者の便利は悪意の犯罪者にとっても便利であることを忘れず、警察や金融機関の広報、各種メディアの報道に関心を持ち、危機意識を高めることが肝心です。
(神田 正範/防犯・防災コンサルタント)