24カ国のニートに関する調査で日本のニートが話題に
経済協力開発機構(OECD)が2012年に実施した「国際成人力調査」から、ある数字が最近話題になっています。それは、24カ国のニートに関する調査の部分で、日本のニートの学力が「読解力」と「数的思考力」の2分野で堂々の1位だったというものです。「日本の中卒者の読解力は、米国やドイツの高卒者のそれよりも高い」との結果も出ました。
さらには、ニートの学歴を分類した際、日本においては大学以上の学歴を持つ人が、それ以下の学歴の人よりも多かったとも報告されています。ただ、この学歴という点においては統計の取り方に少々偏りがある可能性も示唆され、特に日本の内閣府が毎年更新する「子ども・若者白書」に見られる結果とかなり異なっています。この白書によれば、ニート(若年無業者)の学歴において最も多くを占めるのは、高卒以下になっています。
日本のニートが諸外国と比べて高い学力を有していることは事実
しかし、たとえ学歴が高卒以下であっても、日本のニートが他の先進諸国と比べて非常に高い学力を有していることは、確固とした事実といえます。だとするならば、多くの人が「なぜ、そのように優秀な人々がニートの状態にあるのか」という疑問を持つのも当たり前かもしれません。
ここで一度、「ニート」という言葉の定義を確認しておきましょう。日本と海外、また、日本の中でも内閣府と厚生労働省とで、定義の中に若干の差異がありますが、今は内閣府による定義を見てみます。ニート=「若年無業者」とは、(1)学校及び予備校などに通学しておらず、(2)独身者で、(3)収入を伴う仕事をしていない15歳以上34歳以下の個人を指します。2014年度の平均では、56万人の該当者がいるとされています。
希望職種の統計データに「高学歴ニート」増加の要因が
また、内閣府が行った2002年の調査に、ニートが希望する職種の統計があります。これによると、最多の回答は「仕事の種類にこだわらない」で44.2%となっており、第2位の「専門的・技術的職業」の16.8%の倍以上となっています。ここに、「高学力ニート」を読み解くヒントがありそうです。就労を希望するニートの半数近くが「仕事の種類にこだわらない」。つまり、これは「明確な希望も目標も見つからない」と言い換えられるでしょう。
大学やそれ以上の教育を受けながら、自分の進むべき道を見つけることができない。しかし「こだわらない」と言いつつも、「何でもいいから、とにかく働く」とも思い切れない。ここまでの時間と資金の投資があり、親も周りへの体面がある。そんなジレンマに陥った高学歴ニートの姿が見えてきます。
実際、就職相談に訪れる若者の過半数が「自分の適職が分らない。だから動けない」と訴えます。頭の良い人ほど「正解」が分かるまで行動できないことが多いと感じます。しかし、就職活動に「正解」はありません。失敗を恐れず未知の領域にチャレンジすることが、本当の適性を知る近道であると理解し、まずは行動を起こすことこそが一つ目の「正解」なのです。
(安藤 ゆかり/研修講師・キャリアコンサルタント)