「実質0円」に落とし穴、スマホの分割支払はあくまでもローン
最近、スマートフォンの端末が高級化して高額になったため、端末の代金を分割払いにして、その分割代金と同じ金額を毎月の通信料から控除する(携帯キャリア各社が負担する)ことで、端末代金を「実質0円」にする方法が多く採用されています。
利用者にとっては、キャリア各社に対して毎月の「通信料」を支払えば、携帯端末(スマホ)が実質タダで手に入る感覚ですが、ここにひとつの「落とし穴」があります。スマホ代金の分割支払は、あくまで「ローン」であるという事実です。「ローン」ですから、支払を滞納すると信用情報機関のデータベースにその情報が登録されてしまいます。
1回の延滞だけでも金融機関などにその事実がわかってしまう
では、支払を何回滞納すると情報が登録されるのでしょうか。実は、たった1回滞納した場合でもその情報が登録される仕組みなのです。信用情報機関のひとつであるCIC(株式会社シー・アイ・シー)を例にとって説明しましょう。
CICの加盟各社は、同社のDB(データベース)を参照することができます。そのDBには、それぞれの利用者(消費者)について、ローン会社やクレジット会社に対する毎月の支払状況が過去24カ月分にわたって一覧表形式で記載されています。引落日に支払われた場合は「$」のマークが、支払われなかった場合は「A」のマークが付されます。つまり、たった1回の延滞(Aのマーク)だけでも、DBを閲覧した金融機関やクレジット会社にその事実がわかってしまうことになります。
ただし、この情報をどのように捉えるかは、各金融機関やクレジット会社によって異なります。支払が3カ月分以上滞った場合には「事故情報」としての「延滞」が記録され、いわゆる「ブラック情報」に異動するわけですが、そうでなくても、たった1回の延滞の事実を重視して与信を拒否する(ローンを組まない、カードを発行しない)という厳しい金融機関やクレジット会社も存在します。その意味では、「1回くらいの延滞なら…」という甘い考えが通らない場面もあるわけです。
1回目の延滞から60日で事故情報として異動
前項で、3カ月分の滞納で「事故情報」としての「延滞」に異動すると話しましたが、それは1回目の延滞から数えて60日の経過で発生します。「1回目→(30日後)→2回目→(30日後)3回目」というふうに説明すればわかると思いますが、1回目の延滞から3回目の延滞までは60日しかありませんので、この点にも注意が必要です。
その他の「事故情報」としては、「債務整理」(任意整理・民事再生・自己破産等の手続をした場合)や「代位弁済」(債務者が返済不能のため、連帯保証人等が返済するようになった場合)などがあります。そして、それぞれの「事故情報」は原則として完済後(あるいは手続後)5年間にわたり掲載されます(なお、自己破産については5~10年と言われています)。
ただし、完済されていない場合は、債権者であるクレジット会社などが自主的に消さない限り「事故情報」がいつまでも残ってしまいます。例えば、もう10年を優に超える過去のローン債権で、明らかに消滅時効にかかっているような場合でも、債務者側から「時効援用の通知」を行って債務を消滅させない限り「事故情報」を消してもらえないのです。
将来、クレジットカードや車、住宅ローンの審査に通らない場合も
さて、もうひとつ気になることがあります。前述のCICのDBの情報は過去24カ月分にわたる支払状況が一覧表形式で記載されており、その記録が完済後5年間残ります。携帯各社の分割支払は24回(2年)が通常のパターンですから、1回ついた「A」のマークは、完済後5年間経過しないと消えないという結論になります。
「スマホの料金延滞くらい…」と甘く考えていると、将来、クレジットカードの審査に通らなかったり、自動車ローンや住宅ローンを組む際に苦労するということにもなりかねません。十分に注意しましよう。
(藤本 尚道/弁護士)