中高年の失明原因の1位は「緑内障」
年をとるとともに、体のあちこちに不調があらわれます。目もしかりで、加齢によりさまざまな病気が出てきます。中高年の失明原因の1位は「緑内障」です。緑内障は、視神経に障害がおこり視野が狭くなる病気です。視野が欠けても初めのうちはほとんど気がつかず、緑内障がかなり進行してから気がつきます。また視野が大きく欠けてから治療を始めると、進行を抑えることが難しくなりますので早期発見が大切です。眼科で精密に視野を検査してもらいましょう。
視神経障害は、視神経乳頭陥凹拡大の形で現れます。眼科専門医は、眼底検査で視神経乳頭陥凹を正確に判断します。人間ドッグ・健診の眼底検査で「緑内障疑い」と指摘されたら、眼科専門医のもとで、さらに診断することが必要です。
正常な眼圧(10~ 20mmHg)でも視神経がおかされる人がいて、正常眼圧緑内障といいます。また、眼圧は一日のうちで変動します。健康診断などで眼圧が正常でも安心はできません。
2位は「糖尿病網膜症」、早期発見・治療で失明を防ぐことも
2位は「糖尿病網膜症」で、早期発見・早期治療で進行を遅らせ、失明を防ぐことができるようになってきました。
糖尿病網膜症は糖尿病になり、何年も経ってから発症します。けれども、糖尿病にいつからなったのかがはっきりしないことも多いですし、網膜症の初期には自覚症状がほとんどありませんから、安心はできません。早くから定期的に眼底検査を受けて、初期から自分の網膜の状態を知っておくことは大切です。
40代以降のほぼ全員が悩まされるのが「老眼」
前述の2つと異なる、厄介な目の異常があります。失明するものではないですが、40代以降のほぼ全員が悩まされるのが「老眼」です。目の中には水晶体という、カメラのレンズに相当する組織があり、遠くのものや近くのものにピントを合わせる大切な働きをしています。加齢とともに水晶体はかたくなり、水晶体の厚さを変えることができなくなってきます。そのため、近くのものにピントを合わせることができなくなり「老眼」となります。
新聞や辞書などは、以前よりも目から離さないと読みづらくなりますし、少し暗くなると本などの字が見えにくくなります。また読書をしていて、ふと視線をあげると、窓の外の景色がぼんやりして、じっと見ていると「だんだんはっきりしてくる」というような症状が起きてきます。
老眼は治らない、老眼鏡をかけて矯正するのみ?
残念ながら、老眼は完全に治す方法はありません。老眼鏡をかけて矯正する以外に手段はありません。老眼鏡を作るときには、自分の目や使用目的にあった正確なメガネを、眼科専門医に処方してもらいましょう。最初に眼科に行き、検査を受けて処方箋(せん)を書いてもらってから眼鏡店で作ってください。
しかし、眼科手術は最近目覚ましく進歩しており、ある程度治す方法はあります。
(1)白内障+遠近両用眼内レンズ挿入手術(白内障が発生している患者さん向け)
(2)白内障+単焦点眼内レンズ挿入手術でモノビジョン(左右で度数差あり)にする(白内障が発生している患者さん向け)
(3)遠視矯正レーシック(白内障が発生していない 遠視患者さん向け)
(4)近視矯正レーシックでモノビジョン(左右で度数差あり)にする(白内障が発生していない 近視患者さん向け)
(5)近視矯正レーシックで低矯正(裸眼視力0.7程度)にする(白内障が発生していない 近視患者さん向け)
手元の作業をする際は照明を整えることで眼精疲労を軽減
せっかく適切な老眼鏡を作っても、読書などをする際にきちんとした照明を用いていないと字が読みづらく、眼精疲労の原因になったりします。老眼鏡を用いて近くを見る作業をするときは、明りにも気を配るようにしましょう。
具体的には天井灯と電気スタンドを併用して、部屋の中全体と見るものの両方を照らすこと、部屋の照明は明かりの均一な蛍光灯を用いること、部屋の明るさは六畳で80~100ワットくらいを目安にするとよいでしょう。
(田川 考作/眼科医)