大動脈瘤などの大動脈疾患は動脈硬化に関連して起きる
みなさんは「大動脈瘤」「大動脈瘤破裂」「大動脈解離」といった病気を知っていますか?近年ではタレントの加藤茶さん、さかのぼれば昭和の大スターだった石原裕次郎さんが急性大動脈解離で倒れました。
これら大動脈疾患は、いずれも動脈硬化に関連しています。大動脈が破裂すると、激しい痛みを伴い、大量に出血して死に至る危険性があるリスクの高い病気です。男女比では、男性は女性の約3倍の発症率で50歳代から増え始めるといったデータがあります。中高年齢層は大動脈疾患についての知識を持ち、予防を心がけるようにしましょう。
大動脈は心臓から全身に酸素を送る最も大事な血管
さて、大動脈とはどのような働きを持っているのでしょうか。心臓から全身に酸素を多く含んだ血液を送る大動脈は、体の中で一番太い血管であり、人にとって最も大事な血管です。それが異常に膨らんで、紡錘状(ぼうすいじょう)や嚢状(のうじょう)になった状態を大動脈瘤といいます。
大動脈が膨らんだ状態は、血管の壁が非常にもろくなっています。そして、薄い血管壁が破れ大出血することを大動脈瘤破裂、また、3層ある血管壁の真ん中の中膜が剥がれ、そこにどんどん血液が入り込んで裂けていくことを大動脈解離といいます。突然、胸や背中、腹、腰に激痛が走り、ショックや意識消失を起こして倒れたり、内臓や下半身の循環が悪くなって壊死したりします。いずれも、一度起こってしまえば救命率の低い恐ろしい病気です。
悪玉コレステロールを多く含む食事やタバコなど危険因子を避ける
大動脈瘤自体は初期には無症状のことが多く、偶然画像検査やお腹の診察などで発見されることがあります。ある程度の大きさになると、お腹に拍動性のしこりを感じたり、場所によっては咳や声のかすれを生じることがあります。大動脈瘤が破裂しかけた状態を切迫破裂といい、お腹や腰の鈍い痛みで見つかることがあります。この状態で緊急手術をすれば、救命率は上がります。
昔は梅毒の感染によるものがよくありましたが、現在ではほとんどが動脈硬化によるものです。加齢やタバコが増悪因子になります。また、血圧が高いと瘤の進行や破裂の危険が増すと言われています。まれに、先天性の結合組織異常症であるマルファン症候群に合併することがあります。
予防としては、危険因子を避けることです。すなわち悪玉コレステロールやトランス脂肪酸を多く含む食事を避け、最高血圧を120前後にコントロールし、タバコは吸わないようにすることが重要です。
(古家 敬三/医学博士)