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「星野リゾート」の採用条件「非喫煙者」の狙いとは?

JIJICO 2015年7月24日 10時0分

リゾート施設を運営する「星野リゾート」の採用条件が話題に

リゾート施設を運営する「星野リゾート」の採用条件が話題となっています。採用ページの採用指針では、喫煙の有無の確認と喫煙者であっても入社時にたばこをやめることを誓約すればエントリーできるようになっています。喫煙することが法律で禁止されているわけではないにも関わらず、企業の採用段階で喫煙者を排除することができるのでしょうか。

結論としては、喫煙者の採用の拒否は問題ないでしょう。過去の三菱樹脂事件の最高裁判決において、憲法で広く企業の経済活動の自由を保障しているため、特定の思想・信条を理由として採用を拒否しても違法ではないと判断されています。たばこについても、「たばこを吸わない人のみ採用」という企業理念があれば、それに共感しない人の採用をどうするかは企業の裁量に任されています。

作業効率、施設効率、職場環境という3つの要素を重視

今回の「星野リゾート」の採用条件では、作業効率、施設効率、職場環境という3つの要素を重視しています。たばこには中毒性があるため、集中力の低下を招き、作業効率が落ちる可能性があります。また、現在、職場では分煙を求められており、企業が投資して喫煙スペースを設置する必要があります。そのために投資をするより、顧客のためのサービスに投資をするべきであるということに問題は見当たりません。

職場環境という要素においても、社員間の不公平感が大きな悪影響を及ぼすことになります。例えば、1回あたり5分の喫煙時間でも回数を積み重ねれば、1日に本来の休憩時間以外に1時間以上を労働時間中に取ることもあります。一方、喫煙習慣のない社員は、本来の休憩時間しか取れません。こうなると、喫煙習慣のない社員にとっては、なぜ喫煙する社員が自分たちより労働時間が少なく、休憩時間が多く取れるのかと不公平に感じるのは当然のことでしょう。

同様の取り組みが、他企業に広がっていくことが期待される

星野リゾートのように原則として企業には採用の自由が広く認められていますが、どんな理由でも認められているわけではありません。性別を理由にしたものは男女雇用機会均等法で、年齢制限は例外を除いて雇用対策法で禁止されています。

また、採用後に労働組合に入らないことを条件とすることは、労働組合法で不当労働行為として禁止されています。これらの法律に規定のない理由での採用拒否でも、公序良俗に反し違法とされる可能性があります。

そもそものきっかけは、「星野リゾート」で経営を支えていたベテラン社員がヘビースモーカーで、60歳にして肺がんで亡くなったという過去があります。そこで「社員は家族」という価値観の現社長が、もっと健康に注意することができたのではないかとの思いでプロジェクトが始まり、現在に至っています。このように、「社員は家族」との価値観で健康への配慮を実感することで社員の満足度が高まり、結果として生産性の向上につながっています。同様の取り組みが、他の企業に広がっていくことも期待されます。

(松本 明親/社会保険労務士)

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