最近の市役所は意外にブラック!?
空き家対策特別措置法が全面施行され、2カ月が経過しました。この法律では、周囲に悪影響を与えるほどに放置された空き家(特定空家)に認定されると、土地の固定資産税が最大6倍に跳ね上がるとともに、市町村が強制的に空き家を解体できる制度まで設けられました。同時に、空き家対策は市町村の仕事と位置づけられました。一方で、報道では空き家の撤去に人も予算も不足しており、なかなか踏み切れないとのことです。
世の中、勤務時間の長い「ブラック企業」が話題になっていますが、最近の市役所が意外にブラックなことはあまり知られていません。朝8時半から仕事が始まり、5時になると事務職は仕事終了。それから、定年間近の管理職も早々に帰宅していきます。残された中堅どころの公務員、いわゆる「デキる人たち」は夜の10時が当たり前、日付が変わっても仕事をしています。仕事しない人はますます仕事をせず、有能な人に仕事が集中してしまう仕組みが確立されているのです。
行政の担当者も特別措置法についての理解は薄い
筆者の周辺だけでも事実、近くの市役所を通りかかると夜遅くまで明かりがついている光景を目にします。その上、週末の休日には、選挙にマラソン大会に街コンに、地域のイベントで真っ先に駆り出されるのが市役所の職員だったりします。行政のスリム化、定員削減の時代の流れの中で、行政に求められることが増える以上、仕方ないことかもしれません。
そんな中、筆者も仕事柄、市町村役場の空き家担当に話を聞くことがあります。例外はありますが、だいたい仕事しそうな担当者は1人、大きな市でせいぜい2人、ほとんど他の仕事と掛け持ちです。こちらから「『空家対策特別措置法』が施行になりましたが?」と聞いたところで、「これから具体策を考える」「その際市民の皆様からぜひご指導を頂きたい」と、いかにも行政らしい当たり障りのない回答の中、「どうしていいのかわかりません」「何もしていない」と白状してくれるところもある始末です。
空き家対策は結局、市民がどうするか決める問題
放置された空き家が、すぐに問題になることは滅多にありません。「今日できることを明日に延ばすな」ということわざがありますが、今日できなくても明日、明日できなくても来週、来週できなくても来月…と先延ばしにしても何にも変わらないのです。そのうち冬になれば、放置空き家の雑草が枯れて問題が解決されてしまうこともあります。
市役所は市民の税金で運営されています。その予算も市民が選んだ議会で承認されているのです。結局、空き家対策は、わたしたち市民がどうするか決める問題なのです。
(中山 聡/不動産鑑定士)