大阪府が全国学力テストの学校別結果を内申点に活用の方針
大阪府教育委員会が、中学校で行われる全国学力、学習状況調査(全国学力テスト)の学校別の結果を、高校入試に関わる内申点評価に活用するといった方針を示しました。つまり、このテストで点数の1番多くとれた学校に所属している生徒はみんな、1番いい内申点をもらえます。個人の力ではなく、いわば学校同士の団体戦で内申点を掴み取るという制度です。
そもそも内申点とは何なのか、現在、内申点はどのように評価されているかについて、まずは確認しましょう。
都道府県によって、多少の違いはありますが、内申点は今でも入試には欠かせないものの一つです。高校入試の中には、当日のペーパー試験と内申点の配点の割合が50:50で合否を決める学校もあります。内申点は、多くの人が、学校の提出物や授業態度による平常点、または定期テストの点数などで決められているということを理解しています。
学校別の点数で高校入試の際の内申点を決めるには無理がある
さて、本題に入ります。大阪府教委は、この内申点の評価の仕方を全国学力テストの点数で、さらに学校別の結果を活用しようというのです。目的は何でしょうか?学校の基準によって、内申点というものはばらつきが生まれます。それぞれの担当教師が判定するということもあり、授業態度や提出物の点数のつけ方には差があり、基準が曖昧だからです。それによる不公平や理不尽さは軽減し、平等になるという点や、学校自体も競争心を持つと予想される点はメリットであるといえるでしょう。
しかし、問題点もあります。小・中学校は義務教育であり、私立に通わないほとんどの子は、自宅の近くの公立中学校へ進学します。まだ成長過程で目標がはっきり定まっていない子どもたちも多く、学力の差も生まれやすい中で、学校別の点数で高校入試の際の内申点を決めるには無理があるような気がします。
内申点は「相対評価」から「絶対評価」へ
そもそも全国学力テストの趣旨からははずれていますし、学力は当日のペーパー試験でも判断できます。「点数のとれる、成績のいい子だけを有利に」という考えでこの方針を示したわけではないと思います。しかし、内申点評価というのは、学力のみではなく普段の学習に対する個々の前向きな気持ちや、やる気を見るための材料に使うのが本来の目的ではないでしょうか。テストの点だけでは判断できない、個人の良さや個性を伸ばすことも重要です。
いずれにしても、内申点評価の仕方は、これまでの、他の生徒と比較して評価する「相対評価」ではなく、これからは、自分自身の目標がいかに達成できたかを評価する「絶対評価」に切り替えていこうという考え方になってきています。現状、今回の議題についても学力テストをどのように内申点に反映させるか具体的なことは決まっていないようです。個人の良さを評価できる方法として大阪府教委の方針はどうなのかということも含めて、この方針を固めるには「絶対評価」につなげるためのアイデアが必要となっていくでしょう。
(三田村 泰希/学習塾塾長)