民間企業で試験養育期間中の育児休業を認めているところは9%
「特別養子縁組」とは、原則として6歳未満の子どもの福祉のため特に必要があるときに、その子と実親との親子関係を消滅させ、養親との間に法的な親子関係を結ぶことができる制度のことです。子どもが欲しいのに持てない夫婦、虐待などの事情で親と一緒に暮らすことができない子ども、そんな双方の思いをつなぐ制度として、昭和63年から施行されました。
特別養子を迎えるには、家庭裁判所に申し立てを行い、6カ月以上の試験養育期間を経なければなりません。しかし、その期間中、当該子どもは単なる「同居人」扱い。育児介護休業法では「法律上の子」とはみなされず、たとえ0歳児を引き取る場合でも育児休業を取ることができません。
会社がそれを認めてくれれば休むこともできますが、民間企業で試験養育期間中の育児休業を認めているところはわずか9%。法律上の子の育休を認める60%と比べて、かなり低い数字になっています。
特別養子も法律上の子に準じた扱いにすべき
前述のように、共働きの夫婦の場合、どちらかが仕事を辞めなければ子どもの養育が難しいという状況にあります。それゆえ、わずか1年の育児休業が取れないがために退職に追い込まれ経済的な不安が生じる、実子またはすでに養子として認められた子どもと比べて差別的だなどとして、疑問の声が上がっていました。
こうした現状を受け、厚生労働省は当該試験養育期間中の育児休業について、「法改正のうえ法律上の子に準じた扱いにすべきだ」との報告書をまとめました。実務的にも、すでに雇用保険の育児休業給付の支給に関しては、特別養子も法律上の子と同様に扱うよう裁決がなされていますので、この流れは当然と言えるでしょう。
子を持ち働くことは広く認められた権利
「子を持ちたい」という気持ちを持つのは、人として自然なことです。そしてまた、働くことによるキャリア形成と経済的な安定を求めるのもまた、広く認められた権利です。そのどちらかを、「養育するのが法律上の子ではないから」という理由であきらめなければならないとしたら、育児介護休業法の目的である「育児を行う労働者の職業生活と家庭生活との両立を支援しその福祉を増進する」という趣旨から、大きく外れていると言わざるを得ません。
また、「法律上の子」かどうかは、子ども自身には関係のないこと。大人の勝手な論理で、養親との信頼関係を築くべき大切な時間を奪われる理由はありません。今回の法改正により、里親の希望者が増えること、そして、何よりも子どもたちがより良い環境で暮らせるようになることを切に願います。
(五井 淳子/社会保険労務士)