道徳が小学校では2018年度、中学校では2019年度から正式教科に
現状では、教科外の活動として位置付けられ「偉人伝などの教材を読んで登場人物の心情を理解するだけ」などとして軽視されがちな道徳の時間。その道徳が小学校では3年後の2018年度から、中学校では2019年度から「特別の教科 道徳」として正式な教科に格上げされ、国の検定を受けた教科書を使った週に1時間の授業が実施される見込みです。
指導の方法も、副読本を読んで分かりきった結論を話すだけと批判されることも多いことから、正式教科化後は社会的課題について、子どもたちが自ら考えて解決する「問題解決型」の学習を通じて道徳的な判断力や心情、意欲を育てる方針が示されています。例えば、社会の決まり事や集団行動のルールについて話し合ったり書いたりする「言語活動」や、ロールプレーを通じて礼儀作法を学ぶ「体験学習」など、単に読む道徳から「考え、議論する道徳」への転換を図るということです。
「お勉強」として学校で一律に教えることに違和感
教科書では命の尊さやスポーツなど幅広い題材を扱うこととし、政治問題や生命倫理など意見の分かれるテーマを取り上げる場合には、特定の見方や考え方に偏った取扱いをしないよう、特に公平性が求められています。
その一方で、「正直、誠実」や「公正、公平」「愛国心」など学習指導要領で定められた項目を教科書に盛り込むようにも求めており、立場により考え方に大きな差のあるこれらのトピックが選ばれること自体に国の恣意を指摘する声もあります。
そもそも、人によって解釈の異なる抽象的な概念を国語や算数と同列に「お勉強」として学校で一律に教えることに違和感はありますが、単に本を読んで一方的に正論を押し付ける指導から、正解が一つではない事柄について子どもたち自身が熟考し議論する方向へ進んだことは、半歩前進と評価します。これを機会に、週に1時間の貴重な時間が無駄にならないよう、さらに次項で示す3つの施策を提案します。
さまざまな概念を多面的・多元的に理解できるような仕組みを
まず、教室という閉じた空間で子どもたち同士で話し合うだけでは抽象的な概念を心底理解できるはずもないので、例えばボランティアや擬似職業体験など、学校の外へ飛び出して実際に行動することで体得させることを提案します。全てを担任の先生一人に頼るのではなく、地域の専門家や団体など外部の大人とも積極的に交流すれば、多様な物の考え方があることを実地に知る良い機会にもなります。
次に、そうした実体験を通じて子どもたちが感じたこと、考えたことをみんなの前で発表する機会を設けて欲しいと思います。多くの日本人が苦手とするプレゼンテーション技術の訓練になるだけでなく、自分とは異なる意見を聞くことで、物事を多面的に捉える感性を磨くと同時に、異見を受容しつつ批判的に考える練習にもなります。
そのうえで、発表内容やそれに対するコメントを子どもたち一人ひとりの性格や実際の行動と照らし合わせて、必要に応じて個別にアドバイスする体制を構築してこそ意味があります。ここでは子どものことを最も理解している保護者と密に連携することが重要です。出身地や成長過程、家庭環境など一人ひとり背景が異なるにもかかわらず、学年が同じというだけで全員一律に対応することは不自然です。
このように、道徳という教科の枠を超えて「実体験→プレゼン+討論→個人フィードバック」という実践的なサイクルを導入することで、子どもたちがさまざまな概念を多面的・多元的に理解できるような仕組みを考えて欲しいものです。
(小松 健司/個別指導塾塾長)