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「自立」ではなく「関係への埋没」!「ママっ子男子」急増への懸念

JIJICO 2015年9月15日 18時0分

「ママっ子男子」急増が社会現象化

今年の成人式を迎えた若者を表すキーワードとして話題になっているのが「ママっ子男子」です。「ライトマザコン」「ソフトマザコン」ともいわれ、社会現象にまで発展しています。「マザコン」との言葉からは、あまり良いイメージは浮かんできません。独身女性へのある調査によれば、マザコンに対して70%がマイナスのイメージを持っていると回答。もし恋人がマザコンの場合、22%が結婚を考え直すと答えるなど、かなりシビアな印象を持たれています。

ところが、「ママっ子男子」と呼ばれる本人たちは、自分がマザコンであることに負い目を感じず、「母親と毎日電話する」「母親を下の名前で呼ぶ」「母親との写真をSNSにアップする」「友達とも気軽に母親の話をする」など、周囲にもオープンにしているのが特徴だそうです。姉妹のような「一卵性母娘」の息子版と思って差し支えないかもしれません。

母親の存在感が増すとともに男性の反抗期が消滅

実はこの若者たちの両親世代は、学生時代に「バブル景気」を経験し、「新人類」と呼ばれた40歳代後半の年代なのです。「新人類」自体が安定志向で無気力傾向が指摘されていましたが、同時にその後の男女雇用機会均等法の第一世代でもある女性たちは、バリバリと仕事も母親業もこなしている中堅世代です。その子どもである彼らが、「無理せず、豊かさをエンジョイする」価値観に影響を受け、まだまだ若々しい母親とショッピングなどを共にするなど「友達親子」の傾向を持つのも、わからないことではありません。

実際、「ママっ子男子」を対象とした調査によると「父親と母親、どちらを尊敬するか?」という設問において、母親を尊敬するという回答が1998年には39%だったのに対し、2012年には48%にまで増えているそうです。同時に「家族を煩わしいと思うか」との質問には、1994年には20代男性の22%だったのが2012年には14%に減ったという報告もあります。確かに家庭の中で母親の存在感が増すとともに、若い男性の反抗期が消滅し、仲良し親子が増えている傾向が見て取れます。

幼児的な甘えん坊的「マザコン」とは異なる傾向が

しかし、反抗期が減り、仲良し親子が増えるという傾向からは「自立」というよりも「関係への埋没」という問題が浮かび上がります。SNSの人間関係がその良い例でしょう。彼らが育ってきた環境は、個人的な生身の付き合いよりもネットやSNSを通じた人間関係が中心です。その関係の中で彼らは無視されることを極端に怖がり、常に相手にどう思われるのかと敏感になりながら、コミュニケーションに心を砕いています。こうした人間関係に育った「ママっ子男子」といわれるタイプは、旧来の幼児的な甘えん坊的「マザコン」とは異なる傾向を持ちます。

良く言えば母親だけでなく、他の家族や友人に対しても非常に優しい反面、人間関係にあまり葛藤を生じさせないよう自己主張の希薄さを持つ「クールな調整役タイプ」を特徴としています。自分の感情や意見を明確に持たず、周囲に合わせて関係に埋没していき、傷つくのを恐れているともいえるでしょう。

息子を「男子」から「大人の男性」にするカギとは

このような特徴である「クールな優しさ」を母親だけでなく、パートナーに対しても配慮できるのならば、案外上手くやっていけるかもしれません。しかし、母親とパートナーとの関係等で葛藤に直面した時、男性として強く断固とした決断ができるかどうか心配は残ります。

また、「ママっ子男子」は子どもだけの問題ではありません。息子を自立した男性に育てるために、母親自身が強く明確な意思を持って子離れを決行できるかどうかも大きな課題です。父親だけでなく、母親も尊敬に値する一人の大人として、「自分の自立した生き方を息子に示せるか」どうかが、息子を「男子」から「大人の男性」にする重要なカギであるともいえるのではないでしょうか。

(岸井 謙児/臨床心理士・スクールカウンセラー)

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