若い女性の間でカラコンによる眼の障害が増加
若い女性に人気のカラーコンタクトレンズ(カラコン)による、眼障害のトラブルが増えています。カラコンは化粧と同様で、「カラコンをつけずに人前に出るのは、スッピンで出るようなもの」というくらい、若い女性の間で流行しています。大手ディスカウントストアや、インターネットなどで眼科医の診察なしに購入する人もいて、中には「ソフトレンズは柔らかいから、どんな眼にも合う」と考えている人もいるようですが、それはとんでもない間違いです。
使い捨てコンタクトレンズが出まわる以前は、コンタクトレンズユーザーの9割がハードレンズで、ソフトレンズは目に悪いと言われていました。それは、当時のソフトコンタクトレンズの材質が、酸素透過性が低い固い素材で、角膜への血管侵入を起こすなどの眼障害発生率が高かったからです。そのため、当時メニコンが販売していたソフトMというレンズにおいては、レンズと角膜の間の涙液交換が十分できるフィッティングを得るために、ベースカーブ(レンズのまるみ)は8種類、レンズの大きさも5種類、全体として31種類の形状のレンズが用意されていました。処方医はフィッティングを確認しながら、適当な中央安定と角膜上での適切な動きが得られるレンズを選択して処方していたのです。
障害の原因は眼に合わないレンズを使用しているため
現在、カラコンとしてネットや量販店で購入できるレンズのほとんどがこのソフトMと同じレベルのレンズですが、どのメーカーも形状は1種類のみです。大手メーカーのレンズも同じく1種類ですが、カラコンのレンズの倍以上と十分な酸素透過性を持っています。同じベースカーブのレンズでも、レンズの大きさやエッジデザインでフィッティングや見え方は変わってきます。にもかかからず、適当に購入している人が多く、眼に合わないレンズを使うために障害が起こります。
眼に合わないレンズを使用し続ければ、レンズが眼の表面に張り付き、眼の表面が酸素不足になって傷ができるといった問題が起こります。さらに、カラコンの場合は色素の問題があります。色素が眼表面に接しないようにレンズの層間に完全に埋没されているのであれば問題はありませんが、レンズ表面にプリントされていたり、わずかな摩擦やこすれで色素が露出したりするものが多々あります。
本当に恐ろしいのは感染症
しかし、本当に怖いのが感染症です。中でも、アカントアメーバと緑膿菌感染、この二つは重篤な視力障害を残すことがしばしばあります。アカントアメーバの方が比較的ゆっくり進行し、早めに適切な治療をすれば視力への影響はほとんどありません。しかし、治療のタイミングが遅れれば、角膜に白濁した瘢痕を残して視力もでにくくなってしまいます。一方、緑膿菌感染はもっと怖い病気といえます。一日で角膜が真っ白になってしまい、治療が遅れれば角膜が穿孔(穴があく)することもあり、また、どんなに治療しても角膜の瘢痕治癒は避けられません。
大切なことは、勝手に買ったレンズでも合っているのかどうかを、眼科で確かめること、そして、少しでも目に異常を感じたらすぐに装用をやめて、眼科を受診することです。自分の目の健康は、自分で守りましょう。
(滝 純/眼科医師)