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犯罪者の再犯防止策、社会から孤立しないための支援が必要

JIJICO 2015年9月26日 10時0分

再犯防止策の強化は急務

子どもが犠牲になる凄惨な事件が相次いでいます。被害者が子どもであることで不安に拍車をかけ、怒りを覚える人も少なくないでしょう。また、大阪府寝屋川市の事件では容疑者の前科に注目が集まり、再犯防止へ向けての対策強化を唱える意見が増えています。国が担う再犯防止策としては、刑務所への収監・更生教育、病院への隔離・治療が挙げられ、出所や退院後の社会生活では、保護観察官と非常勤の一般職国家公務員(無給)である保護司が、更生保護と生活観察を担います。

しかし、その担い手は慢性的に不足しており問題視されているのが現状です。法務省の調べでは、窃盗事犯と覚せい剤取締法違反の再犯罪者率が最も多く、再犯防止に力を注いでいます。年を追うごとに減少傾向にある犯罪ですが、目を見張る凄惨な事件の割合が増えているのは事実です。そして、再犯罪者が犯す罪は凶悪化傾向にあり、再犯防止策の強化は急務と言えます。

犯罪者の社会的排除と世界の取組み

罪を犯した者は刑期を満了(罪を償う)しても、社会においては警戒され排除されがちなのが現実です。歴史的にも地域からの追放や村八分は存在し、元犯罪者への警戒心が強く根深いことが伺えます。

このような現状は、日本だけではなく世界規模でさまざまな取り組みがなされています。特に再犯罪者が多いとされる性犯罪において、米国では「性犯罪者情報公開法(俗称:ミーガン法)」を制定しています。制定の経緯は、1994年にニュージャージー州で起きた「少女暴行殺人事件」がきっかけで、犯人には類似した犯歴があったことが重要視され、性犯罪者の情報公開を義務化する法律です。

この法律には賛否両論があり、犯罪から身を守る情報としては有意義ですが、地域社会から前科者を排除する傾向が強くなり、更生の機会を失い、再犯、疾病、自殺などで社会福祉費が増加している現状もあります。また、英国では政府内に「社会的排除防止課(the Social Exclusion Unit)」が設置され、元犯罪者を支援することで孤立を防ぎ、再び犯罪や非行に走らせないようにすることを目指す動きがあります。

酷で無益な犯罪を減らす社会づくり

一度犯罪を犯した者が、再び犯罪を犯すことを再犯罪者と呼びます。各種報道やマスメディアの影響もあり、誤解されやすいのが再犯率という数字です。一般的に取り上げられる数字は、総検挙者の半数以上を再犯罪者が占めるという数字です。つまり、元犯罪者の半数以上が、再び犯罪を犯すという数字ではありません。しかし、発生する事件の半数以上を元犯罪者が起こしており、社会復帰後も更生に向けた支援や見守りが不可欠である証です。また、再犯罪者が減少すれば犯罪そのものが減少することを意味しており、さらなる取り組みが必要です。

これまで、私たちは犯罪被害者にならないために、防犯対策を駆使してきました。その結果、社会的弱者である子どもや高齢者が犯罪のターゲットになっています。また、被害者が弱者であるがゆえに、凄惨さが増しているとも考えられます。本来、守られるべき弱者が深夜の街をさまよい、孤独な生活をしている現代社会で、自分自身の安全を守るだけでは安心と言えません。わが子や両親、家族全員が安全でなければ安心は得られないでしょう。

犯罪とは、被害者はもちろん加害者であっても残酷で無益なものです。今後、私たちはさらなる凄惨な事件を目の当たりにするかも知れません。しかし、絶対に見たくありません。そのために、犯罪ありきの対策だけではなく、元犯罪者の再犯も視野に入れ、犯罪自体を減らす社会づくりこそが目指すべき「真の防犯対策」です。

(神田 正範/防犯・防災コンサルタント)

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