居宅を宿泊施設として貸し出すマッチングサイト「AirBnB」とは
日本海に面した北向きの都市として栄える福岡。アジアに開かれた都市として、日本の中でも異彩を放っています。最近、福岡市内で見慣れない外国人が付近のマンションの一室から出入りし、近隣の住民が不安がり、いぶかることが問題になりました。蓋を開けてみれば、マンションの一室を宿泊施設として有料で貸し出す「民泊」の手法を適用したものでした。
このサービスは、居宅を宿泊施設として貸し出したい人(ホスト)と、日本的な住空間を手頃に体験宿泊してみたい人(ゲスト)をマッチングするサイト「AirBnB(エアビーアンドビー)」を利用したものでした。
日本の登録者は1年前に比べ3倍に急増
「AirBnB」は「世界190カ国超の地元の家で暮らすように旅をしよう」がコンセプトのアメリカ発祥のインターネットサービスです。2008年8月創業し、本社はサンフランシスコ。世界190カ国、通算ゲスト数4,000万人、3万4,000以上の都市でサービスを展開しています。日本の登録部屋数もおよそ1万3,000室が登録され、1年前に比べれば3倍に急伸しているといいます。
ちなみに同サイト上で、ある週末の福岡市内の貸し切り及び個室、大人一人で検索すると、和洋さまざまな123件の部屋が登録されていることがわかります。最安値は一泊2,188円から高値は37,696円、平均単価は8,350円。これを高いと見るか安いと見るかは評価が分かれますが、福岡市内の一般的なビジネスホテルよりもやや高いことがわかります。
規制を無視して野放図にすれば、事件の温床になりかねない
システムだけを聞けばホストは毎月一定の収入が上がる反面、宿泊者による盗難・破損で物件に損失・損傷が出ないかという懸念点が考えられます。また、ゲストは他人の家で快適に安心・安全に過ごすことができるのか、そして、双方共通の懸念として代金決済が挙げられます。
そんな中、こうした利用者の悩みを解決したビジネスモデルが「Airbnb」の人気の秘訣といえるでしょう。ゲストによる盗難や破損などが生じた場合、最大1億円まで補償されます(保証適用国のみ)。ホスト側もサイト上のプロフィールやおもてなしの精神を発揮し、たくさんの良いレビューがもらえるよう快適なサービスに努めます。ゲストは「Airbnb」で料金を支払い、ゲストがチェックインしてから24時間後に「Airbnb」を通してホストに代金が振り込まれます。
少子高齢化により、空き家対策が喫緊の課題になっている我が国にとってうってつけのサービスであり、多くのビジネスチャンスが潜んでいるように映ります。ただ、規制を無視して野放図にすれば、事件の温床になりかねない二面性があるようです。
ゲスト及びホストとも性善説の上に成り立つサービス
平成26年7月10日、厚生労働省健康局生活衛生課長の「旅館業法の遵守の徹底について」と題した通知が出されました。骨子は東京都内で自宅の一部を貸し出して、外国人を宿泊させる宿泊施設を無許可で営業したとして、旅館業法第3条違反で逮捕された事案に端を発するものです。
福岡県保健衛生課営業指導係も「業として対価を得ている以上、施設要件をクリアし、旅館業法の営業許可取得は必須です。治安や衛生面、あるいはマンションの規約にも注意をしてほしい」とコメントしています。
2020年の東京五輪に向けてホテル不足が叫ばれている中、民泊の活用は不可避と見られますが、このサービスは善なる当事者、つまりゲスト及びホストとも性善説の上に成り立つサービスといえます。通訳派遣や室内清掃、飲食提供など派生するビジネスも多数考えられるだけに、事業のリーガルチェックは抜かりなく臨みたいものです。
(村上 義文/認定事業再生士)