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厚労省が認定薬局を指定?いつの間にか変わった薬局の役割

JIJICO 2015年10月28日 10時0分

厚労省の「かかりつけ薬局の機能強化」とは

厚生労働省の「かかりつけ薬局の機能強化」の原案が判明しました。その内容は地域住民の健康相談に応じる薬局を「健康づくり支援薬局(仮称)」として認定し、地域の健康拠点としていきたいというものです。それにより、地域の健康促進を図り医療費の抑制につなげたいという思いがあるようです。

こうした問題に厚労省が取り組む背景は、これだけ医療が発達したにもかかわらず、入院や外来、歯科なども含めて患者数が減少していない、医療費が増え続けているという問題があります。どれだけ検査の精度が上がり、手術の技術が向上し、新しい薬が開発されても、病人が減らないことには医療費は削減できません。むしろ、検査や薬、手術が増えていくことで、どんどん医療費が膨れ上がっています。これに介護保険も入るため、削減に本腰を入れなければ本当に国の保険制度、医療制度、介護制度が破綻してしまいます。

薬局に備わっているべき相談機能が失われた

そこで、白羽の矢をたてられたのが「薬局」です。白羽の矢というよりも、そもそも薬局とは、もともと地域の身近な医療を担う「健康よろず相談所」だったはずです。現在ほど「何かあればすぐ病院」という風潮になる以前、私は昭和50年生まれですが、幼いころの薬局はまだそんな場所だったと記憶しています。

ちょっと体調が悪い時は「くすりやさんで聞いておいで」という感じで近所の薬局に相談し、「市販薬で対応できるのか」「医療機関を受診したほうがいいのか」「生活上で注意することは何か」。そんなアドバイスをしてきたのが薬局だったはずです。

医療機関への受診勧告は、街の薬局の大きな役割の一つでした。しかし、現在は調剤しかできない調剤薬局や物販中心のドラッグストアなど、相談を応需できる体制にない業態が薬局のほとんどを占め、本来なら当然薬局に備わっているべき相談機能が失われています。わざわざ認定という制度をとらなければいけないところに、現在の薬局の置かれている立場が表れていますし、薬剤師や登録販売者の意識や薬業人としてのレベルとモラルの低下が見られます。そのため、健康相談をしている薬局が目新しく見えるという逆転現象が起きてしまっているのです。

病気を予防しようという意識が低下

それでは、以前はそのような機能を持っていたとはいえ、健康相談をする場所がなぜ薬局や薬店なのでしょうか。病院でもいいのではと考える方もいると思われますが、基本的に病院は「病気になってから行く所」です。大多数の方は病気になってしまったり、具合が悪くなってから病院を訪れます。しかし、薬局は具合が悪くなって薬を買いに行くところであると同時に、具合が悪くなくても、毎日服用する保健薬やスキンケア関連品、雑貨など、健康な人も足を運ぶ場所です。そのため、気軽に訪れることができ、相談もしやすく、未然に病を防ぐきっかけをつくりやすいのです。

今まで、人間社会では病気になった人を治すことに全力を傾けてきました。そのお陰で治らなかった病気が治るようになり、現状を維持できるようになりました。その反動として病人は増え続け、日本人は国民皆保険制度の悪い部分として「病気になったら医者に行けばいい、薬を飲めばいい」という病気を予防しようという意識が低下してしまったのかもしれません。

全国の薬剤師、登録販売者のプロ意識が求められる

誰しも病気にはなりたくありません。ましてや、2025年問題(人口の4人に1人が高齢者)を目前に控え、健康寿命の増進が必須となっている現在、水際で病気を防いだり、重症化を防ぐことができる「健康づくり支援薬局」は、その機能が十分に果たせられれば医療費の削減、地域社会の健康に寄与できると思います。

認定制度という仕組みに関しては、医薬品を販売している以上、「相談を受けて当たり前」というぐらいの意識が当然のように求められます。今後、医薬品販売、薬の専門家としてのプロ意識を全国の薬剤師、登録販売者には持っていただきたいと思います。そうなった時に、日本の健康寿命は大きく伸びるでしょうし、そう願いたいものです。

(早川 弘太/健康コンサルタント)

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