がんによる破産が現実となる可能性
がんで破産するという話を聞いたことはありませんか。若干の誇張があるのを否定はしませんが、可能性はないわけではありません。では、実際に何が問題でがんによる破産が現実となるのでしょうか。
そもそも、がんの治療費は高額です。しかし、健康保険に加入している一般の人からすれば、治療費の3割が自己負担となるため、破産するほどではありません。さらに、高額療養費という医療費の自己負担に上限を設ける制度がある関係で、実際の自己負担は一定範囲内に抑えることができます。
健康保険の対象にならない支出に要注意
一方、健康保険の高額療養費の対象にならない支出として、差額ベッド代が有名です。個室に入って治療を受ければ1日数万円…。筆者の知り合いでは4万円の個室に入った方、6万円の個室に入った方が居ます。それぞれ、40日程度入院していたため、160万円~240万円の負担となります。さらに、食事代も実費負担のため、例えば一日1,000円だとすると、40日で4万円の上乗せ。小さいですが、いざとなると高負担に感じられます。
また、職場でがんであることを報告すると、会社が気遣って負担の少ない職場に異動になることがあります。また、胃がんの摘出後の後遺症でトイレが欠かせないような場合は、外回りから内勤に異動しなければ仕事にならないこともあり得ます。
さらに、抗がん剤や放射線治療の副作用で吐き気、めまい、その他自覚的な身体的異変に伴い、通勤、就労自体が不可能になる場合もあります。そのような場合、短期間であれば有給休暇が取得できるほか、有給休暇消化後は会社員であれば、傷病手当金を受け取りながら仕事を休んで療養するという方法もあります。
老後の生活資金に困窮するケースも
がん治療を続けながら働いていても、働き方が不十分と会社に思われる場合には、退職勧奨を受けることもあります。がん治療への理解があるとは言い難い世の中では、雇用の維持を求めることも大変です。逆に自分が気を遣い過ぎてしまうような人の場合、がんの診断とともに退職したり、治療後復職したものの、今までのような働き方ができないため、自ら辞表を提出する人もいます。
私の母も40代前半にがんで亡くなりました。当時、父はかなりの治療費を母に費やしたと聞きましたし、母ががんになってから、家族はがん保険に加入しました。また、私が相談を受けている一般の方々でも、夫婦どちらかのがん治療にお金がかかりすぎて、老後の生活資金に困窮しているケースもあります。
多額なお金が必要ながん保険の重要性
ここで、がん治療の問題点について以下のようにまとめてみました。
(1)高額療養費があったとしても、差額ベッド代等の負担が大きい。
(2)通院治療の場合、高額療養費があったとしても毎月数万円の出費は苦しい。
(3)がん治療に伴う就労継続の困難さにより、残業代のカット、傷病手当金の支給などで結果として収入が減少する。
(4)就労困難な事由による、退職勧奨、依願退職などで収入が途絶えることがある。
(5)がんの治療は長期にわたり、支出増、収入減では手元の蓄えが底をつく懸念がある。
極力、がんにならないような生活を送ることを前提として、重要となってくるのが保険加入です。医療保険とがん保険を比べると医療保険の加入率が高い実感がありますが、お金がかかるのは明らかにがん治療です。がん保険への加入を是非、ご検討ください。そして、保険はがんによって破産しないためのツールとして活用してください。
最後に知識です。社会保険制度を有効に使えば、さまざまな特典が受けられます。有給休暇、傷病手当、介護保険、高額療養費、生活保護など。それぞれ行政も担当が異なりますが、心配な人は事前に会社人事部などに相談しておきましょう。
(高橋 成壽/ファイナンシャルプランナー)