企業において「働かない40代~50代」が増加
総務省統計局の発表によれば、日本の65歳以上(高齢者)の人口は2015年9月15日時点で3384万人、総人口比は26.7%となり、過去最高を記録したとのことです。高齢者の範疇には入らないものの、最近では企業においても「働かない40代~50代」が増加し、問題になっているようです。
若年層のモチベーション低下を招く危険がある
平成3年の前半にバブルが崩壊したといわれていますが、この頃、大学を卒業した人も今では45歳を超えています。バブル崩壊後、就職氷河期に陥り、大手企業の正社員は狭き門となりました。その後に起こる非正規の問題も、ここから始まります。結果、バブル入社までの社員が多く、それ以降が少ないといういびつな人員構成が、働かない40代~50代増加の背景として考えられます。バブル入社組にも大変優秀な方もいますし、社内の教育が行き届いていて、しっかり働いている40代~50代を抱えている企業もあり、もちろん全てがそうだとは言えません。
しかし、一部の企業では45歳未満の若年層を管理職に引き上げたいにも関わらず、上にバブル組が控えており、働かない上司の下で大量の仕事に嫌気が差し、モチベーションの低下を招くという悪循環に陥っている企業もあるのではないでしょうか。さらに、年金の支給開始年齢が65歳になっていくことから、法令で満65歳までの雇用が義務化され、ますます社員の高齢化は進みそうです。
役職定年制などの導入が余儀なくされる
このような働かない中高年上司と、若年層のモチベーションの低下を、企業はどのように対応していく必要があるのでしょうか。現在、管理職となっている人の65歳までの雇用を考えれば、若年層を引き上げなければなりませんし、最後まで管理職として処遇することは難しくなります。役職定年制などの導入が余儀なくされるでしょう。
例えば、役職定年55歳とした場合、あと10年働いてもらわなければなりません。その10年間に給与を支払うためには、それなりの仕事をしてもらう必要があります。そのためには、管理職をしているときから、プレーイングマネジャーとして、専門的もしくは専任的な仕事をさせることが重要です。
「1億総活躍社会」実現のために企業には何が求められるか
「管理職しかできません」では、企業にとっても本人にとっても不幸でしかありません。そのための意識改革、教育を管理職になる前から行う必要があります。管理職になる前、40代前半には、会社の考えをよく理解してもらうこと、また、本人の今後の希望も把握するために面接を行い、ずるずると働かないよう考えさせることが重要です。
そして、どのような専門的・専任的な仕事をしたいのかにより、教育費の援助など、企業がしっかりバックアップをしていくようにしましょう。アベノミクス第2ステージで「1億総活躍社会」を目指すと言っていますが、企業としても、65歳までいかに充実して活躍してもらうか、よくよく考えていかなければなりません。
(影山 正伸/社会保険労務士)