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若者が隠れ蓑にする退職理由の真相

JIJICO 2015年10月14日 15時0分

新規学卒者の離職割合を表す「七五三現象」とは

人事の世界では、新規学卒者の離職割合について「七五三現象」という言葉を使います。これは、学歴別で3年以内に離職する割合を表し、中卒7割、高卒5割、大卒3割が3年以内に離職するという現象です。近年の統計では「七五三」より少し下がってきていますが、せっかく採用した若手社員が戦力になる前に辞めてしまうのは、企業側からすると大きな痛手です。今回は、若者が会社を辞めてしまう理由とそれに対する対応策について考えていきます。

さまざまな機関が若者の離職理由について統計をとっています。その中で、離職理由で上位を占めるものとしては、
・給与に不満がある
・職場の人間関係が悪い
・仕事が自分に合わない
・労働条件(労働時間、休日)が悪い
などが常連として並んでいます。

離職理由の裏に「本当の理由」が潜んでいる

では、これらの離職理由に一つひとつ対応していけば、若者の離職は減るのでしょうか。例えば、「給与水準を上げる」「社内のコミュニケーションを活発化させる」「労働時間を短くする」「休日を増やす」などを行えばよいのでしょうか。

確かに、最低賃金割れの給与水準や、ギスギスした人間関係、過酷な長時間労働などの現状であれば、一刻も早く改善すべきです。しかし、一定水準以上の労働環境・職場環境であるならば、早期離職を防ぐためにもっと考えないといけないことがあります。なぜなら、長年にわたり人事に携わってきた経験上、これらの離職理由の裏に「本当の理由」が潜んでいることを実感しているからです。

「給料」や「労働条件」への不満は隠れ蓑にしやすい理由

「給料」や「労働条件」への不満が原因の離職は、実は簡単に改善できます。それは、自社の給与水準や労働条件の実態について、入社前に正直に説明し、キチンと理解してもらうことです。「給与」や「労働条件」の不満は、その「水準」が理由ではなく、「事前期待とのギャップ」が原因となります。若者の立場からすると、いざ入社してみると「入社前に聞いたことと違う!」ということが不信感となり、早期離職へとつながっているのです。採用する前に、自社の実態を正直に説明することが、新入社員さんと企業の双方にプラスとなります。もし、実態を説明したら採用できないのであれば、早急に改善すべき課題だということです。

一方で、「給料」や「労働条件」への不満は、社員からすると隠れ蓑にしやすい理由です。自分の実力不足を棚に上げ、会社に責任転嫁しやすいのです。経験上、早期離職する人の大半(全員ではありません)は、ローパフォーマー(低業績者)だと社内で認知されています。そして、早期離職するローパフォーマーの多くは、自分の力不足を認めず、他者に責任転嫁します。本質的にはそういう思考様式だからローパフォーマーになるのですが、統計上は「給与」「労働条件」「人間関係」「仕事が自分に合わない」などが離職理由になるのです。

若者を心から応援していく姿勢こそが最も大切

しかし、そういう人たちがダメだということではありません。人の成長過程には、必ず「踊り場」があります。いくら頑張っても芽が出ない時期があるのです。私もたくさん経験しましたが、踊り場の時期には何をやっても報われないため、非常につらく悲しい体験が何度も繰り返されます。

そんな時には、誰かの支えが必要です。一人で逆境を乗り越えられるほど、人間は強くはないのです。若者が成長できずに苦しんでいる時には、上司や先輩、同僚が温かく見守り、サポートしていく社風形成が必要です。自社の未来を、あるいは日本の未来を背負っていく若者を心から応援していく姿勢こそが、最も大切ではないでしょうか。

(福留 幸輔/組織・人事コンサルタント)

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