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増加し続ける患者数!「栄養不足」と「うつ病」の関連性

JIJICO 2015年11月21日 13時0分

栄養不足とうつ病の関係性が注目される

近年、日本でうつ病の患者数が増えていると言われています。厚生労働省が発表した平成23年のデータによると、うつ病で医療機関を受診する患者は約100万人と推計されており、平成8年は43.3万人だった患者数が平成23年には95.8万人と著しく増加しています。(※平成23年の調査は宮城県の一部と福島県を除いています)

そして、最近では栄養不足とうつ病の関係性について注目されています。ただし、栄養不足ということだけでうつ病になるということではなく、精神的・環境的なストレス、運動不足、不規則な生活など、さまざまな要因と栄養不足が重なることでうつ病になるリスクが高まるといわれています。

規則正しい生活を送る人にうつ病患者は少ない

食事面では、加工肉や糖分を多く摂取している中高年の男性において、うつ病の発症が増える傾向にあることが東フィンランド大学の研究でも報告されています。また、野菜、果物、ベリー類、魚、種実類、豆類、全粒粉などはうつ病の予防に効果があることが明らかになりました。

ワシントン大学の研究では、朝食をしっかり摂る、睡眠を十分に取る、運動をするといった規則正しい生活を送っている人は、うつ症状が少ないことが報告されています。うつ病の治療には心身の休息や心理療法、抗うつ薬、環境調整などが挙げられますが、食事や生活習慣の改善については自分でできる治療・予防法です。

うつ病予防につながると考えられる栄養素

では、さまざまな研究で「うつ病予防につながると考えられている栄養素」として報告されている、代表的な例を挙げてみましょう。

○DHA、EPA:青魚など。
○トリプトファン:主に乳製品、大豆製品、ナッツ類、バナナなど。
○メチオニン:牛乳、牛肉、レバー、全粒小麦など。
○葉酸:ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜、ナッツ類、アボカド、ベリー類など。
○ビタミンB6:カツオ、レバー、バナナ、マグロなど。
○ビタミンB12:レバー、青魚、貝類など。
○チロシン:チーズ、大豆製品、ナッツ類など。
○亜鉛:牡蠣、うなぎ、貝類、牛肉、レバーなど。

抗うつ、精神安定に効果が期待されている上記の食材には動物性、植物性の両食品に含まれているため、バランスよく摂取することが大切です。肉類中心で魚や野菜が極端に少ない食事や、反対に動物性食品を一切摂取せずに野菜などの植物性食品のみを摂取する食事など、偏った食事法はこれらの栄養素がバランスよく摂取できません。

青魚に多く含まれるDHAやEPAはうつ病治療に期待されている成分です。そして、肉や魚に含まれる良質なたんぱく質はアミノ酸で構成されており、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の原料になっている大変重要な栄養素です。ただし、ソーセージやハンバーガーなどの加工肉の過剰摂取はうつ病のリスクを高めるという報告があるため、加工肉の摂取量は控え目にすることが大切です。野菜や果物に含まれているビタミンやミネラルも神経伝達物質を合成するために必要な栄養素です。

栄養素とうつ病との関連性には不明な部分も多い

そして、最近では乳酸菌や食物繊維もうつ病との関連性が注目されています。なぜなら、腸と脳は密接に関係していることが近年の研究で判明したためです。腸内細菌はストレスに対して大きな影響力を持っているとされ、良好な腸内環境を保つためにも乳酸菌や食物繊維を摂取することが重要であるとされています。

ただし、うつ病発症のメカニズムが解明されていないため、上記で挙げた栄養素がどのようにうつ病に働いているのかはまだはっきりとわかっていません。それでも、心身を健康に保つためには、これらの栄養素をバランスよく摂取し、睡眠や運動など規則正しい生活習慣を意識することで、健康を維持し、うつ病をはじめとしたさまざまな病気を予防することにつながると考えられます。

(小針衣里加/料理研究家)

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