最近流行りの言葉「下流老人」とは
最近流行りの言葉に、下流老人という言葉があります。「下流老人」(朝日新書)の著者・藤田孝典氏が作った造語であり、その意味は「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と定義されています。それでは、老後貧乏から下流老人に転落する分かれ目はどこにあるのでしょうか。
私が住宅販売の仕事に関わって、顧客のために必ず行っているサービスの一つに「ライフプランシミュレーション表の作成」があります。住宅を購入しても、貯金ができて、生涯、住宅ローン以外のお金を借りなくても生活できる状態が表を通して目に見えるように行っているサービスです。このシミュレーション表を作ることで、顧客が住宅にかけても良い予算が把握できるので、安心して住宅を購入できるということです。
住宅購入で生活が厳しくなる現実も
シミュレーション表を作ってわかるのは、大部分の顧客が支払っていける予算を超えて住宅を購入しようとしていることです。理由は、毎月のローンの支払額の根拠が現在のアパート代や知人の毎月の住宅ローンの支払だったりするからです。しかも、それまで払っていなかったボーナスまで繰り入れて住宅を購入しようとします。それでは、アパートにいた頃より苦しくなるのは当たり前です。
私が住宅を検討する顧客に、住宅購入後の生活のイメージを質問すると、ほとんどの人が「生活が苦しくなるイメージがあります」と答えます。そして、実際、ほとんどの人は住宅購入で生活が厳しくなっているようです。
長らく賃貸住宅で生活していた人も、定年退職すると住宅の購入を検討しています。理由は、年金収入だけではアパート代を支払っていけないからだそうです。ところが、その住宅購入予算に退職金すべてをあてようとする人が多いのです。年金が満額もらえるまで毎月赤字になることが理解されていないようです。
生涯の計画の中に老後が入っていない?
日本人はお金の生涯設計がとても苦手です。特に生涯の計画の中に老後が入っていないのです。老後貧乏から下流老人に転落する分かれ目は、住宅購入時であることが非常に多いようです。かといってアパート代を死ぬまで払い続けることができる人はまれでしょう。住宅購入を決めた理由を問う大手不動産会社のアンケートでも、「アパート代がもったいない」という回答が一番になっています。
住宅を購入するにしろ、アパートに住み続けるにしろ、生涯の設計はとても大事です。お金は貯め過ぎてもダメ、使いすぎてもダメなのです。生涯設計を定期的に行っていないと下流老人になる可能性が増します。不安のない老後の準備を若いころからしておきたいものですね。
(福間 直樹/ファイナンシャルコンサルタント)