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児童虐待への切り札!「どならない育児」の重要性

JIJICO 2015年11月8日 13時0分

群馬県の児童虐待件数が深刻化

群馬県内では、児童虐待の件数が年々増加傾向にあります。平成20年度は557件に減少したものの、それ以降は増加の一方で、特に平成25年度は前年度よりおよそ90件多い739件、26年度では958件と過去最悪の数値と増加率を記録しました。平成26年の虐待の内訳は心理的虐待が39%と最も多く、次いで身体的虐待の34%でした。そして、最も多く虐待を受けているのは小学生、次いで3歳からの幼児という結果になっています。

この事態を重く受け止めた群馬県は、保護者に「どならない育児」を広げようと「コモンセンスペアレンティング」というアメリカで生み出されたプログラムを活用し、育児の「クオリティ・オブ・ライフ(QOL)」を高める方針を決定したそうです。

子どもをどなることはさまざまな危険性を孕んでいる事実

「どなる」という行為は、子どもに大きな恐怖感を与える行為として心理的虐待に該当しますが、この心理的虐待は子どもが成長していく過程で消えていくものではありません。何かしらの形で子どもの心に深く根強く残ります。その時に受けた先進的苦痛を抱えながら成長していく子どもたちの中には、その心の傷や苦痛を抱えたまま成長し、いつの日か精神疾患を発症する可能性が高いという研究結果が出ています。

さらに、人間には「耐性」というものがあります。一度でも大人にどなられた子どもは、その瞬間からどなられることに対する耐性ができあがります。すると、次に同じ程度で大人がどなっても、最初の時ほど効果的ではないと大人は感じます。子どもも一度受けた「どなられる」という罰に対しての「慣れ」があります。そのため、大人はより効果が出るようにするため、どなりの程度を大きくします。このスパイラルが次々と積み重なっていくことで事態はエスカレートし、本格的な虐待や心理的ではなく、身体的などの他の虐待への連鎖へつながっていきます。

「どならない育児」を実践するために

最後に「どならない育児」とは、どのようなものなのかを考えてみましょう。まず、大人が「どなる」時の状況を思い浮かべてみると、おおよそ子どもが大人の指示を受けてその通りに行動しない時だと思います。その原因を大人はどうしても「子どもが怠けている」と考えがちです。そのため、「できるのにどうしてやらないのか」という思いを大人が持ってしまいます。さらには「親に反抗している」という苛立った感情さえ出てきてしまう場合もあるでしょう。

それを防ぐために、指示の出し方を工夫してみましょう。例えば、子どもが騒いでいる時に「うるさい」と一喝するのではなく、「これから電車に乗るから静かにしようね」とあらかじめ約束を伝えておきます。もし車内で騒いでしまったら「静かにしようね。約束したよね」などという声掛けをします。車内で静かにしていたら「静かにできてえらいね。約束を守っているね」と褒めてあげましょう。

事前にどうすればよいか伝えておいたり約束を守ることに価値を持たせたりすることで、大人がどなる必要がなくなります。また、この方法を実践することで子どもを褒める機会が自然と増えます。そうすることで大人が子どもを褒める練習にもなり、子どもは褒められることで自信を持ったり、保護者への安心と信頼をさらに強く持ったりすることもできます。子どもの人権を保護者、そして他の大人が侵さないためにも「どならない育児」の実践は、将来の日本にとって画期的なプロジェクトだと感じます。

(鈴木 あづみ/個別療育・児童発達支援管理責任者)

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