なぜ、自治体によって介護保険料が異なるのか?
「介護保険料は、自治体によって異なるか?」と疑問をお持ちの方もいるでしょう。あまり他の自治体と比較する機会がない介護保険料ですが、近年、その格差が広がり最大で3.1倍に達しています。従来、厚生労働省は住民の理解を前提に介護保険料の地域格差を認めてきましたが、年間10兆円に及ぶ介護費用の伸びの抑制や地域差による不公平感を解消するため、方針転換に打って出るようです。
では、なぜ自治体によって介護保険料が異なるのでしょうか。介護保険制は、市町村などが運営主体となっている公的な保険制度で、介護保険の被保険者は、第1号被保険者(65歳以上の方が対象)と第2号被保険者(40歳以上65歳未満)の2種類に分かれます。介護保険はこの第1号被保険者が対象で、介護や支援が必要な時に介護保険を適用してサービスが受けられます。また、第2号被保険者でも特定疾病によって介護が必要な場合、介護サービスを受けることができます。そして、介護サービスにかかる費用は、1割は利用者の自己負担、残りの9割は介護保険の負担となります。(一定以上の所得がある方は、自己負担が2割)
少子高齢化により介護保険料も増額
さて、その介護保険の財源は税金と介護保険料で賄われ、その割合は半分ずつで構成されています。半分を国、都道府県、市町村がそれぞれの割合で負担し、残りの半分が被保険者である第1号被保険者、第2号被保険者の負担となり、各市町村の人口比で割合が変わります。すなわち、第1号被保険者の介護保険料は、運営主体である市町村が実情に応じて決めることになります。具体的には、各市町村の介護にかかる費用(介護報酬)、65歳以上の人口などで決まり、必然、各地域で介護保険料は異なります。
介護保険料は3年ごとに見直され、2015年は介護保険料の改正の年となっていましたが、多くの自治体でこの4月から増額となりました。その理由は、少子高齢化によって高齢者の割合が増加して介護にかかる費用(介護報酬)が増えることに加え、それを支える人(40歳以上)が減少していることが要因です。
地域格差是正で現場への影響も予測される
近年は介護保険料の増加に加えて地域によって格差も広がったため、この地域格差を是正しようという策が考えられています。方法としては、介護保険料を押し上げる要素を全国で比較できるオンラインシステムを構築し、介護保険料が高い自治体で過剰なサービスがないかを分析した上で、見直しを促すようです。
しかし、65歳以上の人口増加を防ぐことはできないため、介護保険料を押し上げる要素のもう一つである介護にかかる費用(介護報酬)を「分析し」「見直し」を促すようであれば、結局、現場のサービスにシワ寄せがきて、次の介護報酬見直しで減額される介護サービスが増えると予測されます。
(松本 孝一/介護事業コンサルタント)