2015年の「ブラック企業大賞」が発表
ルポライターや弁護士、首都圏青年ユニオンなどが立ち上げたブラック企業大賞企画委員会が、2015年の「ブラック企業大賞」のノミネート企業6社を発表しました。(URL:http://blackcorpaward.blogspot.jp/)。このブラック企業大賞は今回で4回目、過去には大手飲食店・大手家電量販店・電力会社などが大賞を受賞しているようです。企業にとって、決して有難くない賞であることはいうまでもありません。
ブラック企業大賞は、ノミネートされた企業に対して一般の人がWeb投票する形式で選考されます。では、どのような基準で対象企業がノミネートされるのでしょうか。ブラック企業大賞のホームページには、ノミネート理由が記載されています。概ね長時間労働による過労死などの労災問題が起きたり、セクハラ問題があった企業や団体などが対象とされているようです。
社会的制裁という意味での存在意義は認められる
いわゆるブラック企業が存在することは随分前から話題になっており、それによる労働者の過労や自殺などは大きな社会問題となっています。労働人口が減少していく中で、買い手市場から売り手市場へ移行しつつある昨今ですが、やはり弱い立場に立たされている労働者からブラックな働き方をさせる企業に対して声を上げることは難しいでしょう。そうした中で、ブラック企業を外部の立場からピックアップし、具体的な事例を広く公表して社会的に制裁を与えるというこの賞に、存在意義はあるのかもしれません。
また、このブラック企業大賞とは直接関わりはありませんが、深夜の一人営業問題で騒がれた大手牛丼チェーンでは、営業時間の変更や人員の補充などにより労働環境を改善せざるを得ない状況に追い込まれました。これも、社会的制裁の功績だといえるでしょう。
大賞が社会でどのように生かされていくか
ただし、問題点もあります。それは、ノミネートされる企業からの反論の場が設けられていないこと、大手企業ばかりが注目されて中小企業の問題点が浮かび上がりにくいことです。まず、企業からの反論の場がないことについては、企業は一方的にノミネートされて投票されるのですから、防戦一方となります。Webという公の場でジャッジが下されるため、ノミネートされた企業からの状況説明などもあってしかるべきではないでしょうか。
次に、対象となっている企業が大企業ばかりという点も気になります。確かに、大企業がノミネートされる方がインパクトはありますし、全国各地で多発する労働問題をすべてチェックして選考の場に上げるのは難しいかもしれません。しかし、中小企業の中にも問題のある企業はあるはずです。さらに言えば、Web投票という形式ではどうしても社会的に知名度のある企業に票が集中してしまうという現象も避けられません。今後、この大賞がどのように社会に生かされていくか、注目していきたいと思います。
(大竹 光明/社会保険労務士)