自分の得意とする勉強法を見定める
生徒には、一人ひとり個性があります。例えば、ある学習法で成績が上がった子どもと同じ学習法を別の子どもに試してみた結果、思ったほどの効果が得られないことがよくありました。また、ある生徒の実例で興味深いものがあります。その生徒は、ある英単語テストの前に教科書を眺めて暗記して挑んだテストで、満点をとりました。次回テスト前にはノートに英単語をびっしり書いて暗記しました。しかし、半分しか点数がとれなかったのです。
それは、その子の「認知特性」に合った学習ができていなかった可能性があります。学生時代、漢字や英単語をなかなか覚えられないとき、「ひたすら書いて覚えなさい」と親や先生に言われた経験はないでしょうか。もちろん、この方法で覚えられる人もいるでしょう。しかし、それでは覚えられないといった人がいるのも当然のことです。なぜなら、「認知特性」に合った、自分の得意とする学習法ができていないからです。
認知特性は3つのタイプに分かれる
認知特性とは、眼や耳から入った情報を理解・整理・記憶・表現する方法のことで、大きく分けると3つの分野に分かれます。
視覚優位者:見たものをそのまま記憶するのが得意
言語優位者:文字を頭の中でいったん映像化して考えるのが得意
聴覚優位者:言葉に発することで記憶するのが得意
この認知特性は、生まれながらある程度決まっており、成長につれ育っていくもので、大きく変えるのは難しいとされています。先にも書いたように、漢字や英単語を覚えるときは書いて覚えるよう指導されることが多いのですが、これを強制させられてしまうと、成績が上がりやすいのは言語優位者のみということになります。
児童の認知特性を把握することで学習効果が大幅に向上する
一般的に「頭のいい人」というのは、こうした偏った教育者の考えから作り出された人で、その教育者の指導の特性に合わない人は努力しても「頭のいい人」にはなれませんでした。重要なのは、我々大人がそれらを理解し、指導する際に解説を教え込む「ティーチング」ではなく、自分に合ったやり方で考えさせ、自立的に学習させる「コーチング」です。
今後は、それぞれの児童の認知特性や発達段階を的確に判断し、個々のニーズに合わせた学習法を提案、実践していく必要があります。そうすることで、学習意欲も高まり、学習効果も大幅に向上します。
また、子ども自身が自分の認知特性について把握することも大切です。自分の認知特性を知ることで、日々の考えや選択をするとき等に自分がとるべき行動や、苦手なことから逆転するためのアプローチも見つけやすくなります。学生一人ひとりと真剣に向き合い、個々に合わせた適切な対応をし、各児童の自立に向けて支援することが、現在の教育者の大きな役割となってきています。
(三田村 泰希/学習塾塾長)