現代人を悩ませる健康問題は肥満に起因
メタボや糖尿病といった生活習慣病。現代人を悩ませるこのような健康問題は、肥満に起因します。厚生労働省の国民健康栄養調査によると、日本人の肥満率は、男性が28.6%、女性が20.3%(2013年)で、40歳代の男性では34.9%と特に高く、3人に1人は肥満であるという結果も出ています。
太っている人の食生活のイメージといえば、砂糖がたっぷり入った炭酸飲料をがぶ飲みし、ファストフードのハンバーガーやフライドポテトをほおばるなど、カロリーの摂り過ぎを思い浮かべるかもしれませんが、問題の本質は「カロリー過多」など単純ではありません。
現代日本人のカロリー摂取量は、戦後直後の食糧難時代と同水準
日本人の平均カロリー摂取量をみると、終戦直後の1946年で1903kcal、高度経済成長を迎えたあたりの1975年がピークで2226kcal、その後減少し、2005年には1904kcalと戦後直後の水準まで低下しています。つまり、現代人はカロリーのとり過ぎというわけではありません。
では何が変わったのでしょうか。それは、カロリーをどの栄養素から摂取しているかの内訳です。1946年では、脂質由来のカロリーはわずか7%だったのが、2005年には24.9%にまで増加。一方、炭水化物由来のカロリーは80.6%から60.4%に減っています。
これは食べる物が変わったからで、昭和のはじめから終わりにかけて、肉類の消費量は約11倍、卵は約6倍、牛乳・乳製品は約23倍、油脂類は約20倍に急増。反対に、一人あたりの年間の米消費量は、昭和37年に118.3kgだったのが平成17年には61.4kgと約半分にまで減っています。これほどの短期間で食生活がここまで激変した民族は、歴史的に見ても日本ぐらいのものです。
食生活の変化を一言で言うと、「食の欧米化」に集約されます。個人的な話で恐縮ですが、私も学生時代にイギリスへ留学して食事が変わったことで、わずか3カ月で10kg太り、帰国後に同じく3カ月で10kg痩せるという経験をしました。日本と欧米の食事の違いと、体に与える影響の大きさをこのときに体感しました。和食がユネスコの無形文化遺産に登録された際にも、選定理由の一つに「健康的だから」という項目がありましたが、和食は健康的な食事の条件を多分に含んでいます。
日本型食生活の一汁三菜を見直し肥満を回避
和食の主食はごはんですが、主食にごはんを選ぶことで、自然とおかずは低脂肪・低カロリーのものになります。一方パンを選ぶと、玉子焼きはベーコンハムエッグに、ほうれん草のおひたしはバターソテーに、お茶は牛乳にといった具合に脂肪分が増えます。
さらに、一汁三菜で供される和食は、野菜やキノコだけでなく、ミネラルが豊富な海藻が使われるのも特徴で、肉とその加工品をとらなくても魚、そして大豆でたんぱく質を補うこともできます。加えて、納豆、味噌、ぬか漬けなどの多様な発酵食品の整腸作用も日本人の健康を支えてきました。これらはすべて、山と海を有し、水が豊かで湿度が高い日本の地理的、気候的条件によって生み出された素晴らしい自然の恵みに他なりません。肥満者の増加は、その日本型食生活をわずか数十年で崩壊させてしまったことに起因しているのです。
今の自分の食生活に問題を感じている人は、確かに炭酸飲料の糖分やジャンクフードの質の悪い油や食品添加物も気になるところですが、まずは食事を和食中心にするところから始めてみてはいかがでしょうか。
(圓尾 和紀/管理栄養士)