巣鴨のラーメン店が同業種では初めてミシュランの一つ星を獲得
「ミシュランガイド東京」の2016年版で、巣鴨に店舗を構えるラーメン店が一つ星を獲得しました。ラーメン店というジャンルで星を獲得したのは初めてとのことで、素晴らしい快挙だと思います。私はそれほどラーメンマニアではありませんが、思わずこのお店にラーメンを食べに行きたくなりました。ミシュランガイド発売の翌日には、早速、昼間から100人を超える行列ができたとのことで、これはミシュランの威力がすぐさま発揮された現象といえます。
さて、今回の件が広告的にどんな意味があるのか、少し検証しましょう。ポイントは二つあると考えられます。一つは掲載が世界最高峰のレストラン・ランキング本「ミシュランガイド」であること。そしてもう一つは、獲得したのが「ラーメン店」であることです。
相当な広告的効果をもたらす
まず、「ラーメン店」が受賞したというギャップによって話題性は抜群です。こう言っては失礼ですが、まさかラーメン店が一つ星を取るとは誰も予想してなかったのではないでしょうか。もっとも、世に言う食通やラーメン評論家の間では「星を取るとしたらこのお店」との以前から囁かれていたようです。しかし、一般の人々にとってはこの店を「ミシュランガイド」によって初めて知り、できれば一度は食べに行きたいと思う人がかなり多いことでしょう。もちろん、一杯850円という価格的なこともあります。
以上のことを考えれば、当然ながら今回のミシュランガイド掲載はこのお店にとって相当な広告効果をもたらしました。ミシュランガイドによる星獲得はシェフ、あるいは店のオーナーにとっては生涯最高のブランディングであることは間違いありません。さらに今回はもう一つ、重要なことがあります。それは、これまでどちらかといえば「高かろう美味かろう」的な選出が多いミシュランの中で、このラーメン店のように「安くて美味い」を目指す店舗や料理人を勇気付けたという点です。
今までミシュランガイドは値段の張る店が多い傾向にあった
そもそも、「ミシュランガイド」は1950年代にフランスで登場し、東京版は2007年に発売されたのが最初です。そして、この調査員は誰だかわからない全くの覆面で、日本のレストランについてはフランス人と日本人の何人かの合同調査だとされています。そして、2016年版もそうですが、星を獲得する店は基本的には先ほどお伝えした通り、値段の張る店が多い傾向にあります。
ということは、そうした店が結果、星を取るのはある意味当たり前です。高価な食材と一流のシェフ、例外はあるでしょうがまずいわけがありません。もちろん、その中でも三ツ星店は飛行機に乗ってでも行きたいと思える店であり、相当厳選していることは事実です。また、都心の一等地に店がある、内装が凝っていて雰囲気が良いなどの条件が揃えば、当然、料理の値段は高価になります。ですから、三ツ星を取るお店にはそうそう行けるものではありません。
ラーメン文化が世界的に広がりを見せている証
いずれにしても、今回の件は「日本が(東京が)、世界で最もおいしい料理を提供する国の一つ」であることをあらためて知らしめたと言えます。日本人は、繊細であり器用です。決して大味ではないのです。例えば、寿司やてんぷらは海外から来る旅行客を魅了し、とても評価が高いと聞きます。今後、そこにラーメンも入ってくるでしょう。実際にドイツ人が「ラーメンは最高だ。これほど完璧な料理はない」とコメントしているのを、何かのテレビで見たことがあります。
今や日本国内だけのブームだけでなく、「たかがラーメン・されどラーメン」の域まで世界的な広がりを見せている証ではないでしょうか。ミシュランも認めた「ラーメン文化、ここにあり!」なのです。
(石川 一彦/広告プロデューサー)