日銀金融政策決定会合でマイナス金利導入を決定
1月29日午後1時前、日銀金融政策決定会合で5対4の僅差で、マイナス金利導入を決定・発表しました。国債の金利は大きく下落し、発表翌週の10年もの利付き国債の利回りは、個人向け国債で保証する最低利率0.05%を下回る水準まで下がりました。
その影響を受け、銀行の預金金利も軒並み引き下げられ、証券会社が取り扱う公社債投資信託(MMF)も新規募集停止するなどの影響が出ています。
生命保険も、一生涯の死亡を保障する終身保険や、子どもの進学資金を準備するための学資(こども)保険は、今後、予定利率の引き下げが見込まれ、契約者が支払う保険料のアップ、場合によっては販売が中止される可能性も否定できません。
以上のように、預金者や投資家が保有する金融資産のうち、金利で収益を稼ぐ商品にはマイナスの影響が大きくなっています。
個人、企業が銀行に預ける預金にマイナス金利は適用されず
なお、現状では、金融機関が日本銀行に預ける預金のうちの一部について0.1%の金利を支払うことが想定されますが、一般の個人、企業が銀行に預ける預金には、マイナス金利は適用されていません。
マイナス金利政策が適用されると、銀行が日本銀行に預ける資金は、金利を支払って預けることになっており、「銀行には日本銀行に預けるよりも、個人や企業への貸し出しに回してもらい、設備投資や消費を活性化したい」という狙いがあると考えられます。
現状では、住宅ローン金利の引き下げが行われ、住宅購入予定者にとっては、追い風になっているとも考えられます。
しかし、事は簡単ではありません。金融機関は、収益悪化が懸念されるため、顧客の口座管理手数料を徴収するようになったり、信用度の低い中小企業への貸し出しを縮小する動きが懸念されますし、住宅ローンの金利も、金融機関の収益改善のために、引き上げられる可能性も考えられます。
個人家計も、銀行に預けてマイナス金利が適用されるようになった場合「預金しても金利がつかないなら、消費に回そう…」となれば政策の狙い通りですが、将来不安が高まり、銀行から預金を引き出してタンス預金にするなど、家計防衛姿勢を強め、景気が悪化して、「日銀が目指すインフレとは逆のデフレの進行を招くのでは」との懸念もあります。
マイナス金利政策の狙いは円安・株高の進行を後押しすること
マイナス金利政策の狙いの1つには、円安・株高の進行を後押しすることにあったと思われますが、金融相場を見ると、現在のところ副作用のほうが大きく出ているように思われます。
金利引き下げの恩恵を受けて、REITは比較的堅調に推移しているように思われますが、株価や為替相場は過去2回の金融緩和局面とは異なり、その方向性がつかみにくくなっていますので、積極的な投資は非常に難しい局面と考えられます。
日本銀行は物価上昇2%目標の達成のため、マイナス金利の幅を拡大する可能性を否定していません。次の日本銀行の金融政策決定会合は3月14、15日。その発表に注目です。
(益山 真一/ファイナンシャルプランナー)