世間で高評価の塾が我が子に合うとは限らない
4月の進級・進学を前にして、我が子も新年度から学習塾へと考えている保護者も多いと思います。JIJICO2月4日の記事で、学習塾業界はコンプライアンス意識が高いとは言えず講師も玉石混交なので、自らの目で教室を選ぶことは保護者の責務だと書きました。口コミや合格実績など「他人基準」では高評価の塾でも、必ずしも我が子にも適しているとは限らないからです。では、実際にどうすれば最適の学習塾を選ぶことができるのでしょうか。
集団から個別への流れ加速
昭和時代までは、学習塾もほとんどが学校と同じ集団授業でした。ところが、21世紀に入り生徒のニーズが多様化するにつれ個別指導への移行が急速に進み、今では全国に約5万教室ある学習塾市場の半分近くを個別指導が占めるまでになりました。大手の集団塾も多くが別ブランドで個別指導の教室を展開しています。
生徒一人ひとりの都合を最優先に考えれば、個別指導へ全面的に転換しても不思議ではありませんが、講師一人で一度に何十人もの生徒相手に同じ授業で済む集団形式は経営効率が良く、採算面から止めるに止められないのです。しかし、健康診断で異常が指摘されたら専門医を受診するように、学校の集団授業で生じた理解の穴を埋めるのに、塾でもまた集団授業では意味がありません。
マンツーマン指導の課題
そうかと言って、個別指導塾なら何でもOKというわけではありません。特に「マンツーマン」で指導する塾では、講師が生徒のすぐ隣に座って一から十まで丁寧に教えるため生徒はフンフンうなずきながら説明を聞くだけで、自らの頭や手を使って能動的に勉強する習慣は付き難いのが実情です。また、個別指導塾では人件費を抑えようと講師の大半が学生アルバイトのため技量に大きな差が出るうえ、休講や代講が多く講師の入れ替わりも激しいなど、課題も少なくありません。
映像授業の利点
そこで最近は、人間の講義の代わりにPCで映像を視聴する塾が流行っています。機械相手ですので教え方の巧拙や相性の問題はありませんし、必要ならマイペースで繰り返し視聴できるので理解しやすいことは確かです。ただし、映像解説を見るだけでは基礎的な知識や情報の伝達以上の付加価値は生まれません。テクノロジーと人間の融合、つまり生徒が映像授業で主体的に基本事項の学習を進め、理解不足の点や応用問題などを経験豊富な講師が適宜補完する絶妙な組み合わせが必要です。
通塾目的に合うか3ヶ所は訪問
このように学習塾も形態により特徴が異なりますが、積極的な性格なら集団授業、内向的ならば個別指導などと、血液型分析や星座占いのように非科学的な根拠で塾選びをしないことが大切です。高い授業料と貴重な時間を無駄にしないためにも、通塾する目的を明確にしたうえで、集団か個別か、受験専門か補習対策か、大手チェーンか地元密着かで比べるだけでなく、個々の教室の指導方針や講師の経歴を確認するのは勿論、以下3点を基準に3ヶ所以上は足を運んで検討することが必須です。
1.生徒一人ひとりの学力や目的にぴったり合うカリキュラムで指導してくれるか
2.講師の説明が一方通行かつ必要以上に丁寧で生徒が講師に過度に依存していないか
3.長期的な観点から必要なタイミングで適切にサポートしてくれるか
また、子供の方から塾へ行きたいと言い出したら、「行き帰りに友達と一緒に遊べる」とか「授業は座って聞いているだけで楽勝」などと、子供に都合の良いことが理由である場合も多いので要注意です。塾選びを全面的に子供任せにすることは親としての責任放棄で、子供のためにもなりません。
(小松 健司/21世紀教育応援団)