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実は多い「産後うつ」 その実態と発症を防ぐためにすべきこと

JIJICO 2016年3月8日 15時0分

「産後うつ」の実態

大阪府は平成28年2月18日に「産後うつ」について専門の相談窓口を設けました。この窓口では常駐する保健師や心理士が電話対応にあたり、精神科医や産婦人科医も体制に加わるという全国でも珍しい窓口だということです。

女性にとって出産は大きな幸せであると共に、とても重大なライフイベントの一つです。それだけに妊娠・出産を行う女性には、精神的・肉体的な負担も大きく、この出産をきっかけに「うつ病」を発症する女性が少なからず見られます、これは「産褥期うつ病」(産後うつ病)と呼ばれ、その罹患者は出産女性全体の約1割にも上ることが報告されています。
「産後うつ」は出産後2週間から数ヶ月の間に発症しやすいと言われており、いわゆる「育児ノイローゼ」の状態もこの「産後うつ」の発症に関わっていると考えられています。
そして「産後うつ」は母親本人も辛く苦しい状態を過ごしますが、しばしば耳にする「育児放棄」や「乳幼児虐待」の背景にもこの「産後うつ」が潜んでいることが多いのです。

「産後うつ」に多く見られる症状

「産後うつ」に多く見られる症状としては、不眠・途中覚醒などの「睡眠障害」や疲労感・倦怠感・無気力感などの「抑うつ症状」、育児不安や漠然とした不安などの「不安症状」、「食欲不振」「過食」なども見られ、更には訳もなくイライラしたり、全てにおいて悲観的になり自分や周りに対して価値を見出せなくなったりもします。

そして最も不幸なことは最愛の我が子に対して、また夫や家族に対しても無関心あるいは敵愾心を持つようになり、愛情を感じることが困難になって子供が泣いていても無視する、反対に必要以上の怒りを感じるなどが起こり、このことが先述した「育児放棄」や「虐待」につながると考えられます。

「産後うつ」になる原因は一つではない

「産後うつ」になる原因として考えられることは、まず「ホルモンバランスの乱れ」があげられます、産後は女性の一生の中で最も短期間に最大の内分泌学的変化が起こる時期です。まず血液から母乳が作られるようになり、約10カ月かけて徐々に大きくなった子宮がわずか3~4週間で一気に収縮します、そして次の妊娠に備えての準備が始まるのです。この大きな「ホルモンバランスの乱れ」が自律神経に作用し「産後うつ」発症の一要因となるのです。

そして出産後の母親の生活は体力面でも大きな負担が掛かります。オムツの交換や1~3時間おきにミルクを与えるため継続した睡眠が取れなくなり、出産のお祝いで訪れる方や義理の家族の来訪への対応に追われ、外出も自由に出来ないので気分転換をする機会もあまり取れず、この様な精神的・肉体的負担がストレスとなって「産後うつ」発症のもう一つの要因となっているのです。

「産後うつ」の発症を防ぐには周囲の理解と協力が不可欠

この「産後うつ」の発症を防ぐためには、何より家族を含めた周囲の理解と協力が不可欠です。しかし現在の日本は核家族化が進み、出産・育児の経験者である親や親戚のサポートやアドバイスを受けることが自由に出来ないことも多く、夫は平日仕事なので必然的に母親が全てを抱え込んでしまいがちです。
また「産後うつ」を発症する母親は、性格的に生真面目で責任感が強く完璧主義な傾向の方が多いという報告もあります。しかし育児に完璧など存在しません、毎日が予想外の連続で上手く対応出来ないことがあってもそれは普通のことなのです、自分が対応出来ないことは周りの誰かを頼っても問題ないのです。

母親や何より子供の健やかで幸福な生活のために、まずは家族がサポートを心掛け、前述の様な症状に気付いた時は、速やかに行政の窓口や診療内科・カウンセリング等の専門機関に相談し、症状を長引かせないことを第一に考えて欲しいものです。

(西尾 浩良/心理カウンセラー)

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