この20年で4倍に増えた高齢者の犯罪
高齢者というと詐欺などの犯罪の「被害者」のイメージが強い方もいらっしゃるのかもしれません。
しかし、実は「加害者」側の高齢者がここ20年で約4倍に増えています。どのような背景によるものなのか、データをもとに考えてみましょう。
法務省が公表した平成27年の犯罪白書によると、平成7年には全体の刑法犯の3.9%が65歳以上であったのに比べて、平成26年では18.8%にまで増加しています。
人数で見ても4倍近くの増加です。確かに全体の高齢者人口比率も増えてはいるのですが、そちらは平成7年から平成26年までの間に14.6%から25.9%の伸びですから、犯罪の増加は顕著であると言えそうです。
再犯率も高い高齢者の犯罪
それでは、高齢者の犯罪にはどういった特徴があるのかを見てみましょう。犯罪白書によれば、出所した年から2年の間に再び刑務所に入ってしまう人(2年以内累積再入率)のおよそ4人に1人が高齢者、5割弱が50歳以上となっています。
つまり、短期間の間に繰り返してしまう人が多いというわけです。
実際に犯したものを見ると、窃盗が一番多く(73%)、その中でも万引きが60%弱を占めています。
女性の場合は特に顕著で約8割が万引きによる犯罪です。とはいえ、傷害や暴行などの犯罪もここ最近は急増しているようではあります。
社会とのつながりの薄さが犯罪の引き金になることも
一度社会に復帰できたにもかかわらず、窃盗、万引きを繰り返してしまい、再度刑務所へ入所してしまうケースは、実際の刑事弁護でも目にすることが少なくありません。
それまでのコミュニティに関わらない暮らし方から、福祉などの地域サポートのエアポケットに入ってしまった結果、必要な支援を受けられなかった人もいます。
また、老老介護などの環境の下で、軽度の認知症を見過ごされてしまい、万引きにつながってしまったというケースもありました。
罪を犯した高齢者の社会復帰は民間の支援も重要
私は、罪を犯してしまった人の社会復帰のポイントは住まい、仕事、人とのつながりの復活だと思っています。
犯罪を犯す、犯さないにかかわらず、私が実際にお会いする高齢者の多くは、「高齢者」というには気力も体力もしっかりした方々が多いように思います。
しかし、一方、その方がその気力や体力に応じた仕事を見つけ、生活を継続していくことはとても難しい時代となってしまいました。
年齢から就職先に面接する機会すらなく、年金受給額は少なくなるばかり。
昔ならば子どもの手や資力を頼る高齢者もいらしたでしょうが、経済情勢からそういうこと自体も難しくなっています。
若い人であっても出所後の社会復帰には見えない壁が立ちはだかるところ、高齢者の場合にはより一層高い壁に挑戦しなければなりません。
自治体だけの公の力だけでなく、民間のネットワークによっても、高齢者の社会復帰を手助けできる仕組み作りが急務と言えます。
(白木 麗弥/弁護士)