2020年大学入試制度が大きく変更
5年後の2020年度から、現行のセンター試験に代わって「大学入学希望者学力評価テスト」が導入されるなど、大学入試制度が大きく変わります。
丸暗記の知識量だけを重視するのではなく思考力や判断力を測ることを目的に、従来の科目ごと縦割り試験マークシート選択問題に加えて科目横断型問題や記述式問題が出題される予定です。
この記述式問題につき数十万人の答案を人力で採点すると最大2ヶ月もかかると予想されることから、効率化を図るためAIの活用も検討する案が文科省により示されました。
記述式問題のイメージ例を見ると、確かに複数分野の知識を組み合わせて回答する「情報編集力」が必要なつくりになっています。
しかし、回答方法(アウトプット)が複雑になるだけで、知識重視の勉強(インプット)が必要なことに大きな変わりはないように見えます。
また、AIによる採点業務では「文章の長さや語彙数など人間が入力した採点条件と照合して瞬時に正誤を判定する」ことが想定されていることから、むしろ形式にこだわりパターン化した紋切り型の回答が横行するのではないかと危惧します。
これから必要とされる人材を入試で選ぶ必要性
10~20年後には、日本の職業の半分はAIやロボット等で代替することが可能といった予測もあります。
コモディティー化した仕事を機械が担うようになると、人間には絶対的な正解のない課題を解決する独創力が求められるようになります。
実社会で必要となるこうしたスキルを育むことが21世紀型教育の根幹であるはずですが、記述式と言えどもAIで正誤の判定が可能な一つの「正解」が存在する問題では、創造性に富んだ人材を育むというより、逆に機械処理可能な作業に適した人間を選別することにならないでしょうか。
センター試験廃止と希望者全員の入学許可を提言
大学入試制度改革では、高校在学中に科目ごとの学習到達度を測る「高校基礎学力テスト」も新設されます。
こうした試験で大学進学に必要最低限の基礎学力は担保されることを前提に、いっそのことセンター試験は廃止して希望者全員の入学を許可してはどうでしょうか。
実際、18歳人口が減少し続けた結果、大学・短大への入学者総数を志願者総数で割った収容力は9割を超え、えり好みさえしなければどこかに入学できる「大学全入時代」に突入しているのです。
年齢・性別・人種など無条件で老若男女誰でも入学させる一方で、カリキュラムや卒業要件で大学・学部・学科ごとに固有の特色を打ち出せば、学生側も自分の学力や目標と照らして進学先を真剣に選ぶはずです。
これまでのように偏差値や模擬試験は参考にならないうえ、実力も興味もないのに簡単には卒業できない難関大学を名前だけで選んでも、お金と時間の無駄使いになるからです。
高校卒業後いったん社会人を経験して目標を定めてから入学したり、中退しても何度でも再チャレンジできる柔軟な制度にすれば、学生数の減少に苦しむ中堅私立大学にも恩恵があるでしょう。
(小松 健司/21世紀教育応援団)