マイナス金利により世代間で恩恵と負担増が生まれる
第一生命経済研究所の試算によると、
日本銀行が導入したマイナス金利政策によって30~40代の世帯には年7,000円超のプラス効果が見込まれる反面、60~70代では年間約1万円前後のマイナス効果が見込まれるとのこと。
マイナス金利政策の影響を確認し、家計における対策を解説します。
マイナス金利が生活に及ぼす様々な影響
マイナス金利政策が導入されて約2カ月。金利の低下により、生活には様々な影響が出ています。
「大手銀行の普通預金の金利が0.001%に」
「証券会社が扱う公社債投資信託の1つであるMMFが販売停止」
「4月以降、生命保険会社が販売する一時払終身保険の保険料を値上げ」
など、金利を収益源とする金融商品には概ね向かい風が吹いています。
高齢者世帯等の資産を多く保有する世帯には、概ねマイナスに作用しています。
「某銀行の変動金利型住宅ローンの金利が0.5%を下回る」
「某銀行の10年固定金利期間選択型住宅ローンの金利が1%を下回る」
「大手8行の借換え申込件数が前月比2.5倍」
など、家族形成期、家族成長期を迎える30~40代の世帯にはプラスに作用しています。
以上のとおり、金利だけを見ると、資産運用にはマイナス、借入れにはプラスとなっていますが、今後、資産運用や家計はどうすればよいのでしょうか。
マイナス金利を資産運用に活かすには?
資産運用では、金利以外に収益源に着目するのも1つの方法です。
金融商品の収益源は、主に金利、株価、外国為替、不動産、商品の5つ。
それぞれの市場特有のリスクがありますので、自らのリスク許容度を考え、それぞれの金融商品が持つリスクと上手につきあいながら、
金利以外の収益源に着目して投資することも1つの方法です。
例えば、金利により低下により、借り入れコストが下がるため、不動産投資にはプラス効果が見込まれ、不動産投資信託(J-REIT)には追い風となります。
また、企業も「株主への配当」よりも「借入利息の支払」のほうが、コスト負担が少なく済むケースも考えられます。
発行済株数を減らせば配当金の負担を減るため、自社株買いを実施し、結果として1株あたりの利益(利益÷発行済株数)が増えることで、株価が押し上げられる可能性も考えられます。
マイナス金利に注目して家計を考える
一方、住宅ローンや教育ローン等は、従来、繰上げ返済により利息負担を減らすことが望ましいとする傾向がありましたが、超低金利のローンであれば、繰上げ返済による利息軽減効果も小さくなります。
そのため、利息負担軽減よりも、低金利の恩恵を長期間にわたり享受することを優先し、繰上げ返済に回すことができる資金を「投資にあてる」「手元に残す」方がよいと考えることもできます。
また、終身保険、個人年金保険、学資保険等の貯蓄性が高い生命保険を新規契約する場合、予定利率の引き下げにより、保険料負担がアップする傾向が強まります。
新たな生命保険選びでは、貯蓄性よりも万一の場合の保障を重視したいものです。
言い換えれば、現在契約中の貯蓄性が高い保険、特に2000年頃までに契約した保険は続けたいものです。
来月からは電力の小売り自由化が始まり、来年4月には消費税の引き上げが予定されるなど、世の中は激しく変化しています。
新しい年度を迎えるこのタイミングを活かして、
家計の見直しを検討してみてはいかがでしょうか?
(益山 真一/ファイナンシャルプランナー)