夜間頻尿は生存率にまで影響する
皆さんは夜寝てから朝までにトイレに起きることはありますか。
夜何度も起きると眠いですし、十分な睡眠がとれませんし、日中眠くなる原因にもなりますよね。
今日は夜間頻尿についてお話をしたいと思いますが、泌尿器科ではそもそも夜間頻尿を、夜間就眠中に1回以上排尿に起きるという愁訴としています。
しかし困っていなければ治療の対象ではありません。そのため通常は2回以上を問題としています。
中には1回しか起きないけれどもその後が眠れなくてつらい方や、何回も起きるけど特に困らないという方もいらっしゃいますが。
夜間頻尿が問題になるのは生活の質を低下させるからです。
排尿に関しての症状で、生活の質に最も影響を与える症状は、男性では昼間の頻尿や尿意切迫感を抑えて夜間頻尿が1番でした。
女性では腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁と肩を並べる頻度でした。
夜間頻尿は骨折の発生率にも影響しています。
転倒に関連した骨折は夜間頻尿がある方では、ない方の倍以上に増えていたという報告があります。
骨折の影響もあり夜間頻尿のある方の生存率はない方より明らかに低くなっています。
高齢者に多い夜間頻尿
夜間頻尿の頻度が2回以上の方は70台で男性の6割、女性の5割と決して稀なものではありません。
また70台で夜間1回も行かない方は男性も女性も1割しかいらっしゃいません。また年齢とともに夜間頻尿の頻度は増えています。
夜間頻尿には多尿、夜間多尿、睡眠障害など複数の原因がある
夜間頻尿の原因を調べるには、1日の排尿時間、排尿量を記録していただく排尿記録が大切となります。
それは夜間頻尿の原因に多尿、夜間のみの多尿、夜間の膀胱容量の低下、睡眠障害など様々な原因が考えられるからです。
まず多尿ですが1日の尿量は通常2000ml以下ですので、1日の尿量が2500ml以上あるいは体重 x 40 mLより多い場合に多尿とします。
原因としては水分過剰摂取、糖尿病などが挙げられます。特に多いのが血液をサラサラにするために水分をたくさん摂っている方です。
過剰に摂取した水分は尿となるため、意味がないのでやめていただきたい習慣です。
夜間多尿についてお話します。夜間尿量は就寝後から起床時までの合計の尿量です。
夜間多尿は夜間尿量の1日尿量に占める割合が、若年者で0.2以上、高齢者で0.33以上と定義されています。
原因は水分過剰摂取、薬剤性、高血圧に伴うものなどが挙げられます。
夜間の膀胱容量の低下は前立腺肥大症、過活動膀胱などで生じます。
睡眠障害は不眠症、うつ病、睡眠時無呼吸症候群などで生じます。
では次に夜間頻尿の治療についてお話しします。
夜間頻尿の治療について
まず多尿、夜間多尿の治療についてです。
飲水に対する指導、運動療法、利尿薬、高血圧に対する治療があります。
1日の尿量が多い方では尿量を減らす対策、夜間の尿量のみ多い方では寝るまでの尿量を増やし寝てからの尿量を減らす対策となります。
夜間の膀胱の貯める力が落ちている場合は原因の病気の治療となります。前立腺肥大症や過活動膀胱の治療を行います。
睡眠障害の治療は入眠障害、中途覚醒(再入眠障害)、早朝覚醒、熟眠障害、過眠(長時間睡眠)などの不眠のタイプに合わせて行います。
最後になりましたが夜間頻尿の治療は一筋縄ではいかないことが少なくありません。
内科的疾患のコントロールも重要でありお困りの方はかかりつけ医もしくは泌尿器科医にご相談ください。
(横木 広幸/開業医(泌尿器科、透析))