犬猫の殺処分の現状と問題点
近年、「動物の愛護及び管理に関する法律」が改正され、全国の保健所やボランティアの人々の努力もあって年々犬猫の殺処分数は減少しています。
この取組みは一見順調なように見えますが、いまだに年間およそ10万頭の殺処分が行われており(平成26年度)、一刻も早く人間の身勝手によって起こる殺処分を無くすことが望まれています。
そのような中、未だに、ペットが捨てられる原因の中で増加中のものがあります。
2013年に全国の保健所等を対象に行われたアンケートでは、犬の飼育放棄をする人の世代は60代以上が56.3%と半数以上を占め、犬の飼育放棄理由としては飼い主の死亡・入院が26.3%で1番多い結果となりました。
つまり、高齢の飼い主が亡くなる、または病気になることで犬を飼えなくなり、手放しているケースが最も多いのです。
猫の飼育放棄理由は少し異なると思われますが、同様の理由で飼育放棄に至るケースも少なくないと思われます。
本来、動物が好きで飼っているはずの飼い主が本人の意図に反して、結果的に自分のペットを殺処分に追いやっているとすれば、非常に不幸な話です。
高齢者にとってペットは生きがい
一方、核家族化が進み、子供たちと離れて暮らすようになった高齢者にとってペットは家族の一員であることが多く、特に独居高齢者にとっては生きがいとなっていることも少なくありません。
またそれだけではなく、ペットを飼うことによって認知症を改善したり、リハビリ訓練の補助になることもあるため、高齢者がペットを飼うメリットというのは多岐に渡っているのです。
しかし、多くの高齢者は最後まで面倒をみる自信がないからという理由でペットを飼うことを断念しているのが現状です。
高齢者がペットを飼える社会にするにはどうすれば良いか
では、高齢者が不安なくペットを飼うにはどうしたら良いでしょうか?
第一に提案したいのは受け入れ先の確保です。飼い始める前から何かあった時に引き取ってもらえる相手や団体を決めておけば、いざという時にも安心できます。
お互いのペットの引き受けを約束し合うコミュニティをつくるのもいいかもしれません。
それ以外の方法としてはペット信託という方法があり、これはこれから増えていくと思われます。
耳慣れない言葉ですが、最近増えているペットのために飼育費用を残す方法で、自分に何かあっても残されたペットが不自由なく生活できるよう用意しておくことができるのです。
今後は、社会全体で高齢者のペット飼育をサポートできるしくみづくりが必要となるのではないでしょうか?
(亀森 直/獣医師)