低下し続ける若者の日本語力
10年ほど前に私立大学1年生の2割近くが中学生レベルの語彙力しかないという調査が発表されて話題になりましたが、若者の日本語能力の低下が指摘されて久しく経ちます。
短文や絵文字をやり取りするラインやツイッターなどが若者の主なコミュニケーション手段になり、携帯メールをよく使う学生ほど語彙力が少ない傾向にあることも明らかになってきました。
ただし、1990年代に導入された「ゆとり教育」が終焉する頃には子どもたちの読書量も全般的には増え、PISAテストでの読解力は2006年の15位を底に09年の8位から12年には4位と着実に回復し、国語力の低下傾向には歯止めがかかったようにも見えます。
理数系や英語教育と比べて軽視される日本語教育
ところが最近は、理工系の学生のほうが文科系の学生に比べて就職率が高かったり、ノーベル賞を受賞する理工系の学者などの影響もあってか、小学校でプログラミング教育を導入したり英語を正式教科としたりする動きがある一方で、残念ながら国語教育の比重が相対的に縮小しているようにも見えます。
国立大学では文系学部を再編する動きさえあります。
しかし、「学校の成績は国語力が9割」とも言われるように、日本語の読解力、記述力は国語だけでなく全ての教科で必要な基礎です。
神奈川県の公立高校入試でも3年前から記述式問題が導入されました。
日本語力低下は全ての教科にも悪影響を及ぼす
私自身も小中学生の指導経験から全般的な国語力低下に危機感を募らせています。
例えば、「1時間に10秒進む時計があります。正午の時報で時間を正しく合わせました。この時計は午後6時には何時何分を指しているでしょうか。」という小学校高学年向けの算数の問題があります。
計算は得意にもかかわらず、問題文中の「進む」(くるう)「正午」(12時)「時報」(毎正時の合図)の意味が分からずに解けない生徒がいました。
日本語の読解・記述力が不十分なために、数学の文章問題や証明問題で形式にばかりこだわって理論構成が支離滅裂な回答をしたり、歴史や地理の記述問題で固有名詞をひらがなばかりで書く生徒もいます。
限界のある学習塾での対策
そこで中学生になって苦労しないように、私が教える塾では小学校低学年から、生徒の日本語能力に応じた物語または説明文を課題として、自宅で全文をノートに書き写して暗唱できるまで読み込んで、暗唱と簡単な読解・記述の演習問題に取り組んでいます。
しかしながら、風邪をひいて処方される薬が熱を下げたり咳を抑えるための対症療法にすぎず、風邪をひかない体を作るための根本的な治療ではないのと同様に、週に1,2回塾で勉強したり問題集に取り組むだけでは本源的な国語力の向上にはほど遠いのが正直な感想です。
自宅で気軽に読書をすることで国語力アップ
そこで、アマゾンが昨年からサービスを開始した「オーディブル」を利用して、毎月わずか1,500円で子どもたち一人ひとりの読解力レベルに合った本を読み聴きする方法をお薦めします。
高いお金を払って学習塾などへ通わなくとも、iPadやAndroidタブレットがあれば、無料アプリをインストールするだけで、自宅で手軽に楽しく国語力を伸ばすことができます。
本をよく読む子どもほど明確な将来展望を持っているという調査もありますが、教育現場や保護者の間では小学校低学年から読書習慣をつけさせる優良な教材の少ないことが問題視されています。
小中学生向けのタイトルをもう少し増やして、月額を1,000円以内に抑えれば立派な国語ICT教材として一つのマーケットを確立できると思いますが、アマゾンさん、ひとつご検討願えないでしょうか?
(小松 健司/21世紀教育応援団)