利益から返済が出来ているか?
日本経済の先行きが不透明ななか、中小企業の経営者にとってはまだまだ厳しい環境と思われます。
私は債務問題などで困窮している経営者のお金の管理や経営についてのお手伝いをしていますが、多くの経営者がこのあたりの知識に乏しいことで苦労しているのを目の当たりにしています。
そのような経営者の少しでも役に立つものになればと考えています。
殆どの経営者の方は、返済が出来ているし黒字決算だから大丈夫だと安心しています。
しかし、本当に安心していて大丈夫でしょうか?
黒字倒産・利益あって金足らずは実際に起きていることです。
よく聞く話が納税資金や賞与資金の借入ですね。
それは、利益あって金足らずの状況ですから、自社はどうか胸に手を当て良く思い起こしてください。
借りたお金は返さなくてなりませんが、企業存続には返し方が問題になるのです。
税金を払った後の利益から実際に現金は払っていない減価償却費を加えた利益から返済できているか、回っている運転資金から返済しているのかの検証が下記の式になります。
利益償還 とは(税引後純利益 + 減価償却費)の方が(借入期首残高 - 借入期末残高)より、大きい数値のことでこのような経営なら従業員(経営者を含む)のために仕事が出来ていて内部留保もできていますが油断大敵です。
資金償還 とは(税引後純利益 + 減価償却費)の方が(借入期首残高 - 借入期末残高)より少ない数値ということです。
銀行のために仕事をしていて、内部留保があったとしても借入金があるので真の預金の所有者は銀行ですね。
検診が必要です!
1、 部門別独立採算管理会計の勧め
好景気や運が良く業績が良いときは、「どんぶり勘定」でも経営は成り立ち利益も出ることはあります。
しかし、ひとたび不景気や顧客志向が変化し業績が悪化してしまうと「どんぶり勘定経営」では経営が成り立たず経営破綻が近づいて来ます。
ではどうすれば破たん回避が出来るか・・・以前「レコーディングダイエット」と言う本がありました。
毎回口にした食べた物のカロリーを記録して一日の最後に合計を出して、年齢等から割り出した消費カロリーとの関係からダイエット出来る優れものです。
これと同じことが経営にも当てはまります・・・それは「管理」です。
管理することで経営の無駄を省き利益を創出できるのです。
組織の部門ごとで収支管理をすることが重要になります。
工場なら営業・製造・本部、飲食店なら店員・調理場・事務の原価や経費を出来るだけ詳細に科目を分け全て管理することで数値変化を読み取れば利益が出ている原因や損失が出てしまった原因が分かるのです。
ですから全ての部門で利益が出るように管理・検証・実行すれば経営は成り立ちます。
しかし、本部や事務は売り上げが無いので各組織の仕事をすることで売上を計上する方法を取るのです。
利益を確実に創出するには管理会計(稲盛式アメーバー経営)が必須だと考えます。
現実の実績数値を細かく管理することで、損失や利益増減の原因が検証できます
現実ではない数値を部門別に項目細分化して計上しても、正確な収益・利益増減は検証できません。
例えば、飲食業では接客店員やコックや本部事務員などの原価や経費の変化を管理することです。
2、 お金の入口と出口を分ける
転ばぬ先の智慧のなかで最初に行う行動は、振り込みなどの入金は借り入れの無い銀行で取引して経費などの引き落としなどの支払は借り入れのある銀行がお勧めです。
借入のある銀行は入金口座を他行から変えてくれと言いますが転ばぬ先の啓蒙活動者・・・としては丁寧にお断りします。
その代わりに経費などの支払の現金が借入銀行に一時的にではありますが流れ込むので企業の出て行くお金の流れが分かり貸付金融機関の貸付先への義務は果たしていると考えます。
上記でも伝えましたが振り込まれて支払いまで停滞している預り金を貸付資金としたい魂胆が見え見えなのです。
銀行が預かっているお金は一部を日本銀行に当座預金(マイナス金利下では当座預金に対してお金を払う)として預けることにより、自己資本として何倍もの貸し出しが出来るのです。
幼稚園児でも預かっているお金を他人に貸したりしてはいけないことは理解できていますが、法律は幼稚園児の理解を覆す権利を銀行に与えているのです。
何ごとにも絶対はありませんから、賢者な経営者であれば「転ばぬ先の智慧」を選ぶのでは・・・
入口は売上などの振込入金口座のことで、留保口座は借入の無い銀行にします。
出口は経費などの引落口座のことで借入がある銀行にします。
(高橋 章/借金対策を専門とする経営実務コンサルティング)