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子供の便秘は親のせい?実は多い子供の便秘症

JIJICO 2016年6月27日 12時0分

成人女性と同じぐらい割合の多い小児の便秘症

便秘症は、一般的に成人女性の疾患というイメージがありますが、実は、小児にも多く認められます。
事実、最近のNPO法人「日本トイレ研究所」の調査で、小学生の5人に1人が便秘状態であることが分かりました。
その罹患率は、成人女性と同程度です。
また、その便秘症である児童の保護者のうち32%は、子供の便秘状態を認識していなかったことも分かりました。
ここでは、小児の便秘症について解説します。

便秘症とは

 便秘とは、排便の回数が少ないか、出にくいことをいいます。
具体的には排便が週に2回以下、あるいは、便の硬さや大きさが増すことをいいます。
便が硬くなったり多くたまったりすると、腹部に不快感や痛みを感じます。
それにより何らかの治療が必要な状態を便秘症といいます。

便秘症は、原因となる疾患の有無によって機能性(特発性や習慣性とほぼ同義語)と器質性(症候性)に分類されます。
子供の便秘の90%以上(10歳以上では95%以上)は、機能性便秘です。

便秘の原因

 機能性便秘症は、食事と生活習慣です。
多くの場合、小児の食事に含まれる水分や繊維(果物、野菜、全粒粉に含まれる繊維など)の量が不足していることが原因となります。
水分や繊維が不足すると、便は硬くなり、腹部症状(不快感、痛みなど)や排便時の肛門痛、裂孔(肛門が裂けて出血する)を生じます。

また、生活習慣において、規則正しい生活(毎食摂取、おやつは決まった時間に食べる、夜更かしをしない)に、便意を我慢しないこと、ゆとりのある時間にトイレにすわる習慣をつけることなどが守られていないことも便秘の原因となります。

 器質性便秘症は、直腸肛門奇形、甲状腺機能低下症、二分脊椎(脊髄神経の異常)、ヒルシュスプルング病(腸の神経異常)、腹壁破裂、ダウン症候群(腹筋の異常)などが原因と考えられます。
 排便異常に気づいた保護者は、早期に専門医の診察を受けさせることが重要です。

便秘症発症の時期

 小児で便秘症を発症しやすい時期は、乳児における食事の移行期、幼児におけるトイレ・トレーニング期、学童における通学の開始時期といわれています。
特に、2歳から4歳に悪化しやすいです。

この時期に便秘になると、腹部症状や肛門痛などの症状をさけようとし、排便を嫌がり、便意を我慢することにより、さらに直腸内の便塊が巨大化します。一方、常に便塊が貯留することで直腸が拡張し、伸展刺激に対する閾値が上昇して便意が消失し、さらに便秘便塊が貯留します。
この悪循環に陥ると治療に難渋するケースも珍しくありません。

便秘症の治療

1)機能性便秘症の治療
 軽度の便秘症は、小児の食事に繊維の量を増やしたり、水分を十分に摂取させたりすると改善します。
繊維の目安摂取量は1日に「年齢+5g」といわれています。

乳幼児で多量の寝汗が見られる場合には、夜間の着せすぎを改善することで便秘が改善することもあります。
お菓子やジュース類などのカロリーが高いわりにあまり便にならないものは、ひかえることも大切です。

 生活習慣の改善も必要です。規則的な排便習慣が確立してからトイレ・トレーニングを行います。
年長児に対しては、便意を感じたときは排便を我慢せずにトイレに行くこと、毎食後5−10分トイレに座らせることで、消化管に再び排
便習慣(胃大腸反射)を教えます。

幼児期以降は朝起きたらコップ1杯の水を飲み、朝食を必ずとります。体を動かすことも、腸の運動を活発にして便通をよくすると言われています。

 薬物療法は、便に直接働いて軟らかくするような浸透圧性下剤(糖類下剤、塩類下剤)から始めます。排便時の苦痛をとることにより悪循環から抜け出さなくてはならないからです。
無効例に対しては、刺激性下剤や坐薬を用います。

 宿便(便塞栓)がある場合には、完全な便塊除去が重要です。
浣腸、洗腸、摘便などの経肛門的処置が必要になりますが、いずれも患児の苦痛や恐怖を伴い、トラウマを生じさせる可能性があるため、鎮静や入院を必要とします。

 保護者は、薬物の習慣性を心配し十分な排便習慣の確立が得られないまま治療中断となるケースもありますが、再発を回避するために、治療は長期(6ヶ月から2−3年)に及ぶことが多いことを理解する必要があります。

2)器質的便秘症の治療
 レントゲン検査、腸の造影検査、直腸肛門内圧測定などの検査により診断が得られれば、その病気や状態に応じた内服治療、外科手術を行う必要があります。

おわりに

 子供の便秘は、保護者が原因と考えることもできます。食事の内容、おやつの与え方、夜更かしなど保護者の生活スタイルで左右されます。また、トイレ・トレーニング期で失敗した場合に叱るなどの繰り返しにより、トイレに対する恐怖感を知らず知らずのうちに植え付けていることもあります。
子育てには忍耐も必要であること、そして、トイレを楽しい場所にするなどの工夫をしましょう。

【参考文献】
1)小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン 2013(診断と治療社)
2)窪田 充、牛島高介、八木 実、他:小児慢性機能性便秘症診療ガイドラインの作成に向けたアンケート調査。 
日本小児科栄養消化器肝臓学会誌2013;28:1-9
3)Bongers ME, van Wijk MP, Reitsma JB, et al. Long-term prognosis for
childhood constipation: clinical outcomes in adulthood. Pediatrics
2010; 126:156-162

(及川 寛太/内科医)

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