軽度認知障害の症状
軽度認知障害は、健常者と認知症の人の中間の段階にあたる症状です。
トイレや入浴、着替え、食事等、最低限必要な動作はできるので、日常生活にあまり支障はないのですが、ある報告では、軽度認知障害と診断された人は、4年間で約半数が認知症を発症するという報告もあります。
軽度認知障害によって低下する認知機能は、主に「エピソード記憶」「注意分割機能」「行動管理能力」の3つと言われており、それぞれの機能は以下のとおりです。
軽度認知障害によって低下する認知機能
「エピソード記憶」は過去の経験や体験を覚えていて、思い出すことのできる機能です。
「エピソード」を記憶していることですので、例えば「旅行をした」「友人と外食をした」などの体験について、時間や場所、そのときの感情を覚えている機能のことです。
「注意分割機能」は同時進行するいくつかの物事に対して、適切に注意を振り分けたり、切り替える機能です。
例えば、料理をするときに何品かのメニューを同時に作ったり、複数の人と同時に会話をしたりできる機能のことです。
「行動管理能力」は日常生活の中での行動(複雑な判断をする、目標を設定する、計画するなど)を管理する能力です。
例えば、食事の献立を考えたり、旅行の計画を立てたり、囲碁や将棋などの頭を使うゲームをしたりできる機能のことです。
軽度認知障害を予防するための生活習慣
軽度認知障害を予防するためには以下の様な生活習慣を意識することが重要です。
食習慣としてはビタミンC、E、βカロチンなどの抗酸化物質を豊富に含む緑黄色野菜やDHA、EPAなどの不飽和脂肪酸を多く含む魚の摂取を心がけ、肉の場合はヒレ肉やもも肉、ささみなどの脂肪が少なくタンパク質が多い部位が望ましいとされています。
ウォーキングやサイクリング、ジョギングなどの有酸素運動を1日30分程度、週に3~4回程度行い、体を動かす事は効果的です。
さらに人と話たり、積極的に社会的な交流を持つことや日記をつけるなどの文章を書くことや、本を読むなどし、時にはゲームなどをすることも認知症予防には大事な様です。
睡眠習慣では起床後には太陽の光を浴びるようにして、昼寝は毎日30分以内が理想的です。
軽度認知障害からの認知症発症を予防する方法
軽度認知障害の段階では難しい判断が必要なことは無理でも、まだまだ自分でできることが多いので、それを自信や意欲につないでいくことで認知症発症の予防をすることが可能であると考えられています。
実際に軽度認知障害と診断された人達が集まって、料理や小旅行、適度な運動や昼寝などの予防活動を行った結果、18人中16人が軽度認知障害から回復したという報告もあるようです。
軽度認知障害の段階で前述の低下する認知機能を重点的に鍛えることを心がけ、上記の様な生活習慣を意識して実行することが効果的と考えられます。
(佐藤 浩明/消化器内科専門医)