私立大学の44%が定員割れという現状
今年度、私立大学の概況について、日本私立学校振興・共済事業団の調査が発表されました。
それによると、今回調査対象となった私立大学577校のうち257校、つまり全体の44.5%と約半数が定員割れしている状況がわかりました。
これは、去年に比べても1.3ポイント増えており上昇傾向にあります。
近年、少子化が進んでおり、一見すると「少子化の中、大学の数が多すぎる事が原因」という事で片付けられてしまいがちですが、もう少し詳しく見ていくと、そう単純ではない点が浮かび上がります。
大学によっては志願者増や定員増を図るところも
今回着目すべき点としては、すべての私立大学で入学定員充足率が下がっている訳ではなく、むしろ大学によっては前年比110%増となっている所や、来年の収容定員を増やす申請を行っている大学もある(2017年度は44校)という点です。
つまり、大学により差が出てきているという事がわかります。
調査結果では、学生数が多い大規模校に学生が集中し、小規模校は定員を下回っている所が多いという事や、三大都市圏(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、京都、愛知の8都府県)は学生数が増えており、地方の私大が定員割れをしているという事。
また、学部ごとに見ると、内容・特徴がよくわかりにくい学部や就職に結びつきにくい学部の人数が減少している事が見てとれます。
確かに、大規模校は人数も多い分、露出も多く有利であることは言うまでもありません。
また、三大都市圏よりも地方が立地的に不利な事、また、特徴ある学部や就職に繋がる学部よりも、そうではない学部は人が集まりにくい事と、偏りが見られることは、ある意味当然とも言えます。
しかしながら、定員充足率があがっている大学に共通して言えることもあります。
それは、他の大学よりも「大学ごとの工夫や戦略(差別化等)をしっかりとしている」という事です。
近年話題の近畿大学の差別化戦略とは?
例えば、近年、何かと大学としては話題に事欠かない「近畿大学」は、確かに生徒数が多い大規模校にはなります。
しかし、「全ネット出願」や、「奇抜でメッセージ性のある広告」、「個性を出すために教員一人一人をメディアへの取材に応じさせる戦略」、「13学部中8学部が理系という中で女性用の施設の充実性をアピールしたこと」など、時代に合わせた着実なマーケティングを行い、決して一朝一夕ではないさまざまな工夫をしています。
その成果もあって、来年度は定員数を920人も増やす人気大学になっています。
受験する側の意識の変化も大きな要因
受験する側からの視点としても、すでに「大学であればどこでも良い」というようには決して考えていません。
特に、国公立大学に比べて授業料も高い私大は、自分が本当に行きたい大学なのかどうか?また、行って意味がある大学なのかどうか?は、強く求められる点です。
その上、地方という立地や戦略をしっかりと持っていない、時代のニーズに合っていない学部などという条件が重なれば、当然、定員割れが目立ってくるのは自然の事と言えるのではないでしょうか?
大学も少子化という逆風の中で、いかに魅力的な存在になれるか?という戦略が生き残りの重要な分かれ道となってきているのです。
(熊谷 修平/塾長)