ナルシストの語源
古代ギリシャの神話に、ナルキッソスという美少年がでてきます。
彼は若さと超絶的な美しさを兼ね備えていたので、男も女も神々も彼に魅了されます。ところが、相手がいくら失意に落ちようとも、彼は誰も愛することはありませんでした。
その振る舞いに怒った神ネメシスは、ナルキッソスが自分しか愛せないようにしてしまいます。
ネメシスはナルキッソスを泉に引き寄せます。水を飲もうとしたナルキッソスは、泉に映る自分の姿に心奪われ、一瞬で恋に落ちてしまいます。
そして、泉から離れることができなくなったナルキッソスは、やがて死んでしまいました…。
という神話から、自分大好きな人を「ナルシスト」と言うようになりました。
ドナルド・トランプ氏を自己愛性パーソナリティ障害という博士も
現代では、そういった誇大的なナルシストを自己愛性パーソナリティ障害と称します。
以下の5つ以上に当てはまると、その可能性が高いです。
□自分が重要であるという誇大な感覚
□限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている。
□自分が “特別” であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人達(または団体)だけが理解しうる、または関係があるべきだ、と信じている。
□過剰な賛美を求める。
□特権意識(自分が期待すれば相手が自動的に従うことを理由もなく期待するなど)
□対人関係で相手を不当に利用する(自分自身の目的を達成するために他人を利用する)。
□共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない。
□しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む。
□尊大で傲慢な行動、または態度
よって、自己愛パーソナリティ障害の専門家であるサム・ヴァクニン博士はドナルド・トランプ氏を反社会的なナルシストであると結論付けています。
誇大的な自己愛に隠されたもの
自己愛性パーソナリティ障害というと、外交的で自信満々なトランプ氏のような人を想像しがちですが、必ずしもこのようなタイプだけではありません。
□過度に傷つきやすい
□失敗が恐い
□人前に出ると緊張する
□周囲がどう自分に反応をするか敏感
□批判的と感じる反応に敏感
□ちょっとした指摘も容易に侮辱と捉える
□人間関係が持続しない
このような内向的で悲劇の主人公タイプの人も同様の可能性があります。
友好的でありたいがために人に尽くしますが、意見をするとなると、たちまち相手を拒絶し、被害者になってしまうのです。
そういった人は、実は意外にも傲慢で、他者の意見を受け入れることができず、「周りは私を傷つける、人はすぐ裏切る、他人は信じられない、私はかわいそう…。」というのもまた自己愛性パーソナリティ障害なのです。
誇大的に自信満々な人も、人に尽くす悲劇の主人公的な人も、違うタイプのように見えて、実は共通していることがあります。
それは…。『ありのままの自分を受け入れられていない』ということなのです。
そこには意識的であっても無意識的であっても、「劣等感」を受け入れられてない問題が隠れているのです。
しかし、劣等感などはあって当たり前なこと。
正しく劣等感と付き合い、成長に向かうことが健全な劣等感の持ち方なのです。
(青柳 雅也/心理カウンセラー)