人工知能が書いた書籍が発売!その内容とは?
本年8月24日に人工知能(以下AI; Artificial Intelligence)が書いた書籍が発売されました。
このタイトルは「賢人降臨」といい、全てAIが書き、人間による一切の校正も加えていないとのこと。
具体的には福沢諭吉「学問のすすめ」と新渡戸稲造「自警録」の2冊をAIに学習(ディープラーニング)させた後に、「若者」、「学問を修め立身」、「世界を制する」、「成功とは」、「人とは何を示すもの」という5つの「お題」を与え、それをAIが執筆した書籍とのことです。
この記事を書くにあたって、私も本著作を購入してみたのですが、基本的にはほぼ原文と同じ文が続いており、それらの順序や構成が若干違っているといった感じになっています。
文の順序や構成の入れ替えは、より「お題」に合った説得力を出すためにAIが判断して行ったプロセスですが、文章全体を判断して自ら言葉を選んで書くところまでは現段階ではなかなか難しいようですし、元にした文献の文体や時代背景が古いために非常に難解で、読み進んでいくのにも時間がかかります。
AIの発達で便利になる一方、人類が制御できなくなる懸念も
これ以外にもAIの発達は近年の大きな話題となっています。
今から29年後の2045年にはAIの能力が人類を超えるかもしれないと言われており、様々なことが便利になるであろう反面、AIが勝手に自身よりもさらに優秀なAIを作り出すということを繰り返すようになり、人類による制御が効かなくなるのではないかという懸念もあるようです。
現時点ではSFの世界の話のようですが、これから約30年の技術革新の中ではあり得ない話ではなさそうです。
身近なAIとしては、例えばiPhoneのSiriに代表されるようなスマートフォンの音声認識機能をはじめ、検索履歴や持ち主の属性、行動に応じて適切な広告を出す情報提供などが挙げられます。
基本的にAIは情報を得ることによって学習していきます。
人によってはそれらが自動的に収集・蓄積されていることに対して「気持ち悪い」と感じる場合も多いようですが、「この本を買った人はこれも買っています」というAmazonのレコメンドエンジンなどは非常によくできていて、欲しかった本が結構すぐに見つかったりしますから個人的には重宝しています。
AIの得意分野と不得意分野
現時点のAIは得意、不得意な分野がはっきりと分かれていると言えます。
一般的にコンピューターの得意分野である計算や統計によって答えを導き出せる事柄はいいのですが、それだけでは答えの出せないクリエイティブなものに関してはあまり得意ではありません。
レコメンドエンジンなどは多数のサンプルの中から好みの傾向を学習し、統計を取って計算することにより品物を薦めることが目的なので、これは得意な仕事の一つと言えるでしょう。
しかし、前述の執筆という作業はいかにたくさんの文章を学習しても計算だけでは答えを出すことができないので、いくらAIであってもまだまだ難しい分野なのです。
同様に最近話題になっているものとして車の自動運転技術があります。人間が介在しない完全なる自動運転ができるようになるのはまだまだ先のようですが、これも多数のパターンを学習して計算することにより、判断と制御を行うものなので比較的AIに向いている分野なのかもしれません。
ただ、車の場合は万一事故が起こった場合に誰の責任になるのか、という大きな問題があるので、これがクリアにならないと完全なる実用化は難しいでしょう。
AIの進化は人間の幸せにつながるのか?
このように発展を続けていくAIですが、基本はロボットと同様、人間ありきのシステムであるべきで、人間が仕事や生活をより便利にするために機能するべきです。
そのため、その技術が人間を傷つけることや戦争などに使われてはなりません。
今後の技術進化の過程ではそのような倫理観や安全性を第一に考えることが人類に求められる課題ではないでしょうか。
(目代 純平/ITコンサルティング、ITコンシェルジュ)