不動産融資がバブル期を上回る
日銀のマイナス金利の影響で不動産市場にバブル期を上回る融資額が流入しているとのことです。
経済成長が頭打ちした観がある日本において貸出先に苦慮する金融機関が不動産市場ならば未だリスクが低いと考えているのでしょう。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催へ向けての首都圏での再開発や不動産投資信託(REAT)向けが増加し、相続税対策を誘引にした個人向けアパート融資も伸びています。
不動産市場のバブル崩壊はないのか?
バブル期では不動産市場への過大な貸出が地価高騰を招き、それが地方へも波及しましたが、大蔵省(現財務省)の総量規制によって急落しはじめバブル崩壊に至りました。
しかし今回バブル期を超える不動産融資が行われているにも関わらず、局所的・短期的ミニバブルは起きる可能性はあるものの、地方へ波及するような大波バブルは起こる気配がありません。
大きな理由の一つとして、これまで新築偏重であった住宅政策によって住宅が増え続けたことに加え、人口減少によって不動産市場が「供給過剰状態」になっていることが考えられます。
つまり投機目的での不動産融資は少ないので、大波バブルが起こる気配がないのです。
今後賃貸住宅の空室率や持ち家の空き家率の上昇が問題に
むしろ今は、賃貸住宅の空室率や持ち家の空き家率の上昇が問題です。
賃貸住宅の新設数が衰えないのは、節税とサブリースによる家賃保証という不確かな誘引トークによって「はこもの」を建築しているためで、借り手の実需用は非常に少ないケースが健在化し始めています。
地方では賃貸住宅の空室率が20%を超えており家賃のデフレが続いていますし、持ち家での空き家率は14%を上回っており「空き家問題」が社会問題化しています。
その中でバブルが起こる可能性は無いに等しく、むしろ個人の賃貸事業主の返済不能による破たんが懸念されます。
国土交通省は住宅ストック活用型市場に転換させようと住生活基本法を前倒しで改定し、リフォーム市場規模の拡大と中古住宅の取引件数を増加させようと躍起になっていますが、思い通りに進んでいません。
国が掲げている住生活基本法の指針と不動産融資先とがミスマッチを起こしていると言えます。
国が目指す不動産流通の転換と都市計画が融資先とマッチした時に新たな経済成長のビジネスモデルができることは十分に起こりえます。その時には局所的なミニバブルが起こる可能性はあると考えます。
(森田 伸幸/不動産コンサルタント)