シニア起業家が年々増加傾向に
今、シニア起業が増えています。
2014年の中小企業白書によりますと「起業希望者及び起業家の年齢別構成の推移」で60歳以上の方は2002年で24.6%、2007年で26.9%、2012年で32.4%となっています。
我が国全体の人口構成推移の影響もあると思いますが、知識、経験、人脈を豊富に持つシニア世代がITインフラの発達などにより起業しやすくなってきているように思います。
ここでは、シニア起業を成功させるために知っておきたいこと、やっておきたいことややってはいけないこと、リスク等を解説いたします。
起業して会社をつくると社長と呼ばれるようになります!
日本政策金融公庫総合研究所「起業意識に関する調査」(2014年)の経営経験の有無によりますと、起業前に事業を経営したことがない起業家の割合は40歳で82.8%、50歳代で76.7%、60歳代で73.6%となっております。
7割超の方はおそらくこれまでに社長と呼ばれたことがないと思われます。
私も元銀行員で現在、会計事務所を経営しているのですが、社長(私の場合は所長ですが)と呼ばれるのはとても気持ちのいいものです。
そして、社長と呼ばれるということは、自分が自由になんでも決めることができるということで、今まで出来なかったことがこれから自由にすることができる、これがシニア起業の醍醐味だと思います。
そして、この解放感は今までサラリーマンだった方にとっては憧れに近いものがあるかもしれません。
シニア起業家には他の世代の起業家と比べて多くの資産がある
シニア起業家には、今まで社会で頑張ってきたことで培った豊富な資産があります。
知識、経験、人脈、資金。特に資金面は他の世代の起業家よりとても有利なのではないでしょうか。
起業を目指して今まで貯蓄されてきたかもしれませんし、これから年金を受け取ることができるような年になっているかもしれません(利益が出ていないスタートアップ時期にはとても有用です)。
また、お子さんが独立してお金のかかることがなくなっているかもしれませんし、住宅ローンを完済されているかもしれません。
ビジネスはお金でするものですので元手が多いに越したことはありませんし、ビジネス以外でも出費が少ないに越したことはありません。資金調達にしても、銀行員の目線からすると、きちんと返してもらえそうと感じます。
そのため融資の際は有利に働くでしょう。
創業融資では、そのビジネスの経験がどの程度あるかがとても重要です。
自己資金や出費の予想も融資判断にとても影響を与えます。
しかし、いいことばかりではありません!
聡明な皆様方ならすでにお気づきだと思いますが、起業にはリスクがあります。
そして、シニア起業家は多くの資産があるが故に落とし穴にはまってしまうことも。
シニア起業家には特有のリスクが潜んでいる
やはり健康面がほかの世代に比べ気になるところでしょう。
また、老後のために蓄えた資金を起業につぎ込む場合は失敗すると取り返しがつかなくなります。
また、気を付けたいのは、今まで会社に守られてきたという自覚無しに起業してしまうことです。(大企業出身の若い起業家にもいるのですが)
これは、事業計画の精度に影響します。
つまり、甘い事業計画を立ててしまうわけです。
今まで会社の力で立っていた売上を過信して、独立しても同じような売上見通しを立ててしまうと甘い事業計画になってしまいます。
豊富な知識経験が邪魔をして柔軟な発想を阻害してしまうことや、ITなど新しい技術についていけない場合などは他の世代にくらべて不利でしょう。
起業前までにやっておきたいこと
まずは、リスクを最小限に抑える手立てでしょう。
加入されている保険を見直すことはもとより、事業計画を練り上げることです。
シニア起業家にはたくさんの資産がありますので、それを上手に棚卸すること。そのうえで、何がしたいのかと、何ができるのかを考えることが重要です。
シニア起業家には、資金調達などで優遇される場合があります。
日本政策公庫や東京都などで支援しているので活用してみましょう。
(大倉 英樹/経営財務コンサルタント/公認会計士/税理士)