大卒後3年以内の離職率は20年前と変わっていない事実
厚生労働省が、平成25年3月新規学卒者の離職率を公表しました。
それによれば、大学を卒業した人の3年以内離職率が31.9%。
短大や専門学校を卒業した人は41.7%となりました。
「やっぱり今の若者は我慢が足りない」そんな声が聞こえてきそうですが、実はこの数字、すでに平成7年の新卒から明らかな傾向として、厚労省の統計に表れていました。
平成7年の大学卒業者で3年以内に離職した人は32%。内訳は、1年目の離職が12.2%、2年目が10.6%、3年目が9.1%でした。
その後は同じような数値で推移し、平成12年卒業者の離職率が36.5%でピークになります。
ちなみに平成25年大卒の31.9%について内訳は、1年目が12.8%、2年目が10.0%、3年目が9.1%です。
この数値は平成7年卒のそれとよく似ています。
つまり、この20年間、小さな変動こそあれ、若者の離職傾向は根本的に何も変わっていないと言えそうです。
日本の若者がすぐに辞めてしまうわけ
ではなぜ、日本の若者はすぐに辞めるのでしょうか?
独立行政法人 労働政策研究研修機構が発行している『日本労働研究雑誌』平成19年9月版で発表された「若年者の離職理由と職場定着に関する調査」があります。
3500人近くのアンケート回答結果を元に深い分析がされており、正社員歴3年未満で離職した人の離職理由も詳細な報告があります。
以下はその報告文の抜粋引用です。
『早期離職者ほどストレスが理由』
勤続3年未満の者では、「仕事上のストレスが大きい」が29.7%ともっとも多く、次いで、「労働時間が長い」24.4%、「職場の人間関係がつらい」22.2%、「肉体的・精神的に健康を損ねた」17.7% などとなっている。勤続3年未満の方が3年以上に比べ、「採用条件と職場の実態が違った」「労働時間が長い」「経営者や経営理念に合わない」「職場の人間関係がつらい」などを理由あげるに割合が高い。
以上の内容は、私が普段のキャリアカウンセリングで聞いている実際の声とも、よく合致しています。
ひと言で言えば、「採用条件と職場の実態が違った」ということなのです。
特に残業時間と休日出勤が多い職場で、上司や先輩たちとの関係性が良くない場合は、1年以内の離職率が跳ね上がります。
事前の説明と大きく異なる残業などの実態が、若者にとって「ストレス」となるのですが、彼らはただ残業を嫌うわけでなく、会社の風土になっている無意味な残業や、不透明な給与計算になるサービス残業に対して我慢をせず、「今よりましな」会社に転職しようとするのです。
若者の早期離職を改善するためにすべきこと
この20年間、正社員の労働時間は長くなり続けているが、給与にはそれが反映されない。
社員たちは疲弊して、人間関係も悪化する。
仕事に対するやりがいよりも、ストレスの方が大きい・・・そんな図式が、若者の早期離職の根底にありそうです。
これを改善するには、職場側が事前の説明をできるだけ正直に行い、なぜ残業が多いのか、納得できる説明をすると同時に、無駄な残業を減らす職場改善のための具体的な努力も示すことが必須でしょう。
そうすることが、会社の収益力を高めることにもつながり、社員満足と経営満足の両立がかなう道となるはずです。
(安藤 ゆかり/研修講師・キャリアコンサルタント)