増え続ける高齢運転者による交通事故
最近、高齢運転者による交通事故のニュースをよく耳にします。
統計的にも、交通事故の件数自体は年々減少傾向にあるにもかかわらず、高齢運転者による交通事故は増加しているそうです。
こういった、高齢運転者による交通事故が社会問題となっています。
こういった問題に対し、法整備はどうなっているのでしょうか。
まず、2009年の道路交通法の改正により、70歳以上の運転者については、免許更新時に高齢者講習を受講しなければいけないようになりました。
また、75歳以上の運転者については、免許更新時に認知症の検査を受けなければいけないことになりました。
さらに、2015年改正では、認知症の疑いのある運転者に医師の診断が義務付けられ、その結果、認知症を発症している場合、免許の停止となり得ることとなりました。
こういった法整備については、やらないよりはましかもしれませんが、高齢運転者の交通事故を予防する効果は薄いと個人的には思います。なぜなら、高齢運転者が交通事故を起こす原因は認知症だけではないからです。
高齢者になると、判断スピードや運動能力の低下が顕著になり、素早くブレーキを踏んだり、ハンドルを適切に操作して危険を回避することが難しくなることも、交通事故の原因となっていることは明らかでしょう。
運転免許証の自主返納をしやすくする環境整備が必要
このように、高齢運転者による交通事故が社会問題となっていても、運転免許証の自主返納はなかなか進んでいません。
それはやはり、「足」を奪われることへの抵抗が要因だと思われます。
都市部にて生活されている方には実感が沸きにくいかもしれませんが、実際に地方で生活をしていると、公共の交通機関が整備されておらず、「車ナシには生活できない」というのが実情です。
移動手段を失うということは、単に趣味や娯楽を奪われるだけにとどまらない切実な問題であることを認識していただく必要があります。国家レベルだけではなく、地方公共団体としても、バスや特別に廉価なタクシーの利用等、車の運転を諦められる環境づくりが求められていると感じます。
また、高齢者用の三輪車や電動カートなど車に代わる乗り物の普及や、それに伴う道路の整備等にも力を入れるなど、高齢者が運転免許証を自主返納しやすい社会をつくることも必要でしょう。
(河野 晃/弁護士)